近年では国が主導となって教育のICT化を推進しています。大学入試改革や新学習指導要領の導入もあり、お子様がこれから学校でどのような教育を受けることになるのか気になりますよね。
そこで今回は、ICT教育がどういったかたちで行われているのか日本の事例をもとにご紹介します!
目次
ICT教育とは
ICT教育とは、情報通信技術を活用した教育の形です。具体的には学校教育現場で電子黒板やタブレット端末、デジタル教科書などを用いて授業を進めることを指します。
近年では、文部科学省が主導して、ICT教育の推進を図っています。ICT教育の最大のメリットは、子供にとっては学習効率の向上、教員にとっては指導負担の軽減です。
記事を取得できませんでした。記事IDをご確認ください。
日本国内のICT活用事例
政府の策定している「教育振興基本計画」によれば、1台のタブレット・PCあたり児童生徒数が3.6人となるように、普及を図るなど、ICT教育のための環境整備は進んでいます。
従来の授業形態だと、以下のようなデメリットがありました。
- どうしても教師から生徒への一方通行の授業になりがち
- 生徒たちの個々の学習習熟度が考慮されない
- 教材を忘れると、授業に参加できない
- プリントやノートの管理等、授業以外の部分の手間が大きい
しかし、授業にICTを活用すれば、上記のようなデメリットは解消され、生徒と教員の双方が様々なメリットを受ける授業形態を実現させることも可能なのです。
それでは、実際にどのような形でICTは活用されているのでしょうか。全国の学校で実践されている例を紹介し、その効果やメリットについて解説していきます。
パソコンと電子黒板を使った協働学習
まずは、共同学習の事例について紹介いたします。
仙台市立愛子小学校
3年生社会科では、パソコンと電子黒板を使った協働学習の授業が展開されました。
- かまぼこ工場で行われている工夫について調べ、まとめる。
- グループに1台割り当てられたパソコンで、資料を提示しながらグループ内で発表する。
- グループで使っていたパソコンから電子黒板に画面を転送し、クラス全体で発表する。
効果やメリット
- 言葉だけの説明だと分かりづらい部分を、資料で具体的に示すことで、分かりやすい発表ができる。聞いている側も、具体的にイメージしながら聞くことができる。
- パソコンを使うと様々なアニメーションも駆使して資料を提示できるため、児童の関心が高まる。
- 発表に際して必要なパソコンの操作を、実際に使用する中で身につけることができる。
愛知県大府市立東山小学校
4年生国語科では、タブレットパソコンと電子黒板を使った協働学習の授業が展開されました。
- タブレットパソコンを使い、自分の考えた新聞のレイアウト(見出しや記事、絵、写真の配置など)を発表する。
- グループで、よりよりレイアウトになるように編集会議を行う。
- タブレットパソコンから電子黒板に画面を転送し、グループの編集会議の結果を報告する。
効果やメリット
- 話し合いをしながら、リアルタイムで自分のレイアウトを変更することができる。
- 読みやすい新聞づくりを目指すレイアウトの工夫を通じて、表現力を育むことができる。
- 瞬時に文字のフォントや大きさを変更できるため、実践を通じて最適解を探すことができる。
電子黒板やデジタル教科書を使った個別学習
続いて、個別学習の事例について紹介いたします。
石川県立灘町立大根布小学校
4年生算数科では、電子黒板とデジタル教科書を使った個別学習の授業が展開されました。
- 電子黒板を用いて、平行な2つの直線が交わらないことを視覚で捉えさせる。
- 児童一人ひとりが自分のデジタル教科書を使って、平行な直線の性質について考える。
- 電子ノートの三角定規をうまく使いながら、平行な直線の性質を理解する。
効果やメリット
- デジタル教科書があれば、筆記用具や定規といった道具を準備する必要がなく、(気が散る要因もなく)落ち着いて学習できる。
- 動画を使って指導ができるので、理解の遅れている児童に対しても、分かりやすい指導が可能になる。
佐賀県立武雄青陵中学校
1年生英語科では、タブレットパソコンと電子黒板を使った個別学習の授業が展開されました。
- タブレットパソコンに自己紹介文を記入する(英語で)
- 電子黒板に映写された自己紹介文が誰のものなのか、クラスでクイズをする。
- アメリカにいる生徒とテレビ会議を通じて自己紹介する。
効果やメリット
- 海外のネイティブとリアルタイムに話すことができ、生きた英語力を鍛えられる。
- 実際に海外の生徒と英語で話す経験を通じて、英語学習に対するモチベーションを高めることができる。
- 電子黒板とタブレットパソコンを繋げることで、生徒の学習進捗状況の把握や様々な作業(配布や回収等)の時間を短縮できる。
実物投影機やタブレットパソコンを使った一斉学習
続いて、一斉学習の事例について紹介いたします。
愛知県春日井市立出川小学校
3年生理科では、実物投影機を使った一斉学習の授業が展開されました。
- あるものが電気を通すか否かについて、実物投影機を通じてクラス全体に見せる。
- 実物投影機に設計図の見本を提示し、児童全員に設計図の書き方をイメージさせる。
- 自分で設計図を書いた後、討論を通じて適宜設計図を修正していく。
効果やメリット
- 実物投影機を利用することにより、教員の説明の負担の軽減、児童のイメージの促進を図る。
- 授業に実物を用いることで、児童の関心を高めることができる。
- 設計図の作成という1つのテーマについて、適宜他の児童の考えを聞くことで、自分自身で修正する力を高めることができる。
岐阜県池田町立池田中学校
3年生理科では、タブレットパソコンを使った一斉学習の授業が展開されました。
- 天体の動きについて、映像を見ることでイメージさせる。
- タブレットパソコンにタッチペンで自分の考えを書きながら学習を深める。
- 発表の際には、姓と個人のタブレットパソコンを無線LANで電子黒板に送信し、画面を使いながら説明する。
効果やメリット
- タブレットパソコンは書いたり消したりが容易なので、様々なシチュエーションを想定し、シミュレートできる。
- 電子黒板とタブレットパソコンを繋げることで、耳だけではなく、目も使って他の生徒の発表を聞くことができ、理解が深まる。
- タブレットパソコンを使うことで、近所の生徒同士での教え合いも活発になり、協働学習の効果も期待できる。
ipadを使った反転学習
近畿大学附属高等学校
英語と数学の2教科において、ipadを使った反転学習の授業を展開しています。
まずは、反転学習について簡単に説明しましょう。反転学習とは、授業と宿題の役割を反転させるというものです。通常は、授業で新しいことを学習し、その学習内容について宿題で復習を図ります。しかし、反転学習はその逆で、自宅で講義ビデオ等を使って知識を習得し、それを授業に持ち込んで、使いながら学ぶという学習スタイルです。
近畿大学附属高等学校の英語の授業では、授業の冒頭で、宿題(自宅学習)の確認として語彙の復習、テストそして英文の確認を済ませます。その後は、学んできた知識を活かして、グループになって協働学習していきます。協働学習を通じて、相手の考えを的確に把握したり、自分の考えを論理的に説明したりする能力を育むことを目指しているのです。
数学の授業では、授業の始めに問題演習を行います。その後は学習の内容によって、個別学習や一斉指導、さらにはジグソー法などの協働学習を取り入れ、生徒の学習内容の定着を図ります。
効果やメリット
- 授業においてアウトプットする機会が増え、生徒の理解度が高まった。
- グループ活動の中で教師がファシリテーターとして関与することで、教師と生徒のコミュニケーションの機会が増えた。
- 生徒の自宅学習の時間が確保されるようになった。
- 自己の理解度に応じて、学習を進められるようになった。
このように、様々なメリットがありました。そして、最大のメリットとも考えられるのが、これまで長い期間を要していた学習の期間を短縮できたということです。具体的には、英語において、約1年かかっていた学習内容を、およそ半年で終わらせられるまでに短縮したのです。
短い期間で、学習範囲を網羅できるようになれば、当然余裕時間が生まれます。その余裕時間には、生徒個々の弱点を補強したり、強みを伸ばしたり、大学入試に向けての準備に特化したりと、個々の状況に応じて学習を進めることができるようになります。
そもそもICT教育にする必要ってあるの?
現代は、政府もICT教育の重要性を説いています。しかし、保護者世代からすれば、「自分たちはICT教育なんて受けてこなかった。それでも問題なく生きている。本当にICT教育は必要なのか」と疑問に感じる部分もあるでしょう。
結論から言えば、ICT教育に移行していくことが理想です。その理由について、詳しく説明しましょう。
学習において最も重要と言われているのは「学習意欲」です。どれだけの環境が整っていようとも、学習者の意欲が湧かないことには、効果的な学習を行うことができません。ICTを利用しない、従来の教師の力量に委ねられた授業の形態では、どうしても意欲が湧かず、結果として学習に遅れが生じてしまうという子供も多くいます。ICT教育では、例えば映像やアニメーションを利用することで、子供の好奇心を刺激して、学習への関心を高めるという効果が期待されています。
また、子供一人ひとりがタブレットパソコンを所有できるような環境ならば、個別の学習進捗度に応じて、問題のレベルを変えるといったようなことも可能になります。ICT教育では、学習において最も重要な「入り口」部分の学習意欲を刺激することができ、その結果として後の学力向上に繋がっていきます。
非常に変化の激しい現代、「意欲が湧かないから」と学習を疎かにしていると、たちまち時代に取り残されてしまいます。そうならないためにも、どんな内容についても高い意欲を持ち、常に学習していくという姿勢が非常に重要なのです。
また、ICT教育では、学習における様々な無駄を省き、効率的に学習することも可能にします。リアルタイムで学校外の人間とやりとりするということもできるのです。ICT教育を導入すれば、学習の幅は大きく広がっていくのです。子供の主体的な学びを実現させるために、もはやICT教育は必須と言っても過言ではないでしょう。そのため、文部科学省も力を入れてICT教育を推進しているのです。
まとめ
ICT教育では、これまでの授業ではできなかった様々なことが可能になります。授業の幅が広がることで、子供の学習意欲も刺激され、学習の効果が出やすくなることが期待されるでしょう。
子供の学習における効果はもちろん、教員の負担軽減というメリットも期待されます。超多忙として知られる教員の負担が軽減されれば、その分子供とのコミュニケーションに割くことができる時間も増え、学習面の相談はもちろん、生活面での様々な相談も受けることができるようになるでしょう。
以上のような理由から、ICT教育は積極的に導入していきたいところです。何か困ったことがあれば、コンシェルジュにご相談ください。
✔ICT教育とは、情報通信技術を活用した教育の形
✔効果は「学習意欲」と「学習効率」の向上
✔日本の事例を7件解説