【事例集】PBL(問題解決型学習)を導入している大学一覧

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スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
この記事でわかること
  1. PBLの概要
  2. 大学のPBL導入事例
  3. PBL今後の課題
こんにちはスタスタ編集部です!

近年から導入が進み、注目されているPBL(問題解決型学習)。今回はそのPBLについて概要や事例、今後の課題を解説していきます。

PBLの概要

PBLとは課題解決型学習(Project Based Learning)、または問題解決型学習(Problem Based Learning)と呼ばれるもので、従来型の知識偏重の学習ではなく、正解のない問題に対して知識を組み合わせて解決へと導く能力を養うことを目的とする教育法を指します。

2012年の中央教育審議会の答申で初めて登場したアクティブラーニング(能動的・主体的学習)の一環として、全国各地で導入されています。

教師の役割は生徒の関心を引き出し、能動的に課題へ取り組むように促すことであり、あくまで生徒のサポート役として学習を進めていくことが必要です。
そうすることで、従来型の教育のデメリットである応用力の低下や受動的であるがゆえの学習意欲の減退を防ぐ効果が期待できます。

また、PBLでは答えを導き出すこと自体に価値を見出すのではなく、答えをどのように導き出したのかという過程を重視しており、アメリカの教育学者であるジョン・デューイが初めて教育現場に導入されたと言われています。

PBLについての概要をより詳しく知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。

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大学の導入事例

それでは以下で6つの大学においてどのように導入されているのか、その成果はどのようなものかについて紹介していきます。

小樽商科大学

実際に行っている内容

小樽商科大学では、小樽での活動を中心に地域の自治体や民間企業と連携し、課題を実社会に設定する実践体験型のPBLを取り組んでいます。このPBLでは希望に応じて2つのコースから内容を選択できます。

  1. 学生自身が課題を設定・提案して取り組む「提案課題型」コース
  2. 教員が設定した課題に取り組む「選択課題型」コース

続いてコースを選択したら、以下に列挙したよう取り組みを事前学習として行っていきます。

  • プロジェクトの目的や設定した課題の確認
  • 企業担当者と接する際のマナー講習
  • 学習スケジュールの作成
  • 達成すべき目標の設定

事前学習を充分に行った後は実習に入っていきます。
下記は地域の商店街と連携して6ヶ月の実習を行う際の流れです。

1ヶ月目:商店街の実情の把握や、観光に訪れる旅行者の推移などの調査を実施。

2ヶ月目〜3ヶ月目:商店街で働く人たちへのヒアリングを実施し、現場で実感している問題点などを調査。
さらに調査結果を踏まえたうえで、旅行者の興味を引く事業やそもそもの知名度を上げるための施策を商店街振興組合と連携して検討。

4ヶ月目~5ヶ月目:検討した事業内容について中間発表会を開催。発表会でやり取りした内容を踏まえ、商店街振興組合と事業の再検討を実施し、事業案をブラッシュアップ。

6ヶ月目:練り直した事業案を最終成果報告会で発表し、作成した成果物については大学と商店街振興組合に提出します。

その成果

このような実習に取り組むことにより、地域が抱える課題に対する関心や理解度が向上しただけでなく、状況に応じた判断力の向上などが見られました。スタート段階から学生自身が能動的にコース選択できるため関心を持って精力的に取り組むめること、地元の商店街振興組合とのコミュニケーションの機会が多くなるため、柔軟な対応を求められる経験をできたことが、これらを実現したと言えるでしょう。

湘南工科大学

実際に行っている内容

2015年にアクティブラーニングの専用教室である「コラボレーションルームⅡ」を開設。
この教室ではICT(情報通信技術)を活用しており、三方の壁は全面ホワイトボードとなっているなど、自由にアイデアを練れる環境になっています。

各学生に配布されるタブレット端末は教員用PCと共にプロジェクターと無線接続されており、研究内容の発表や他学生との共有がスムーズに行えます。
デジタル化により作業内容の保存や持ち運びも手軽になり、模造紙などを使っていた従来のアナログのアクティブラーニングに比べて授業内外での作業が効率化されました。

その成果

研究の付随的な雑務が大幅に減ったことにより、授業内容そのものに注力する余力が生まれ、教員の改善意欲が高まりました。
その結果として、ディスカッションなど他の形でもアクティブラーニング型の授業が広く展開されるようになっています。
タブレットなどのIT機器の使用頻度が高い学生とICTを導入した授業は相性も良く、社会に出てから自身の専門分野を活かすために必要なスキルの効率的な向上に役立っています。

甲南大学

実際に行っている内容

甲南大学では教職科目を受講している3・4年生向けにチュートリアル型のPBL(状況を仮定し、メンバー間で検討などを行う学習方法)を行っています。
チュートリアル型のPBLの学習プロセスは以下の6つがあります。

  1. 問題に出会う
  2. どうしたら解決できるかを論理的に(実践的・論理的手法によって)考える
  3. 相互に話し合い、何を調べるかを明らかにする
  4. 自主的に学習する
  5. 新たに獲得した知識を問題に適用する
  6. 学習したことを要約する

授業では、上記の6つのプロセスを学習内容に合わせて以下の5つのステップに分割する工夫をしました。

  1. 問題の提示
    上記の1つ目のプロセスに該当。教員からの課題(自分たちが高校教師になったと仮定して生徒が利用する電子教材の制作に取り組む)の提示が行われました。
  2. グループ作業
    上記の2つ目と3つ目のプロセスに該当。グループメンバー内で教材内容や対象科目などについて意見を出し合い、制作活動の方向性をすり合わせました。
  3. 自己学習
    上記の4つ目のプロセスに該当。グループ毎に異なる必要な知識を各自が自力で獲得できるように、ユニット(ワードなどのオフィスやHP作成ツールなどの各種ソフトウェアを学べるe-ラーニング教材)を用いて、学習が進められました。
  4. 教材の制作
    上記の5つ目のプロセスに該当。グループ毎にテーマ設定した教材(生態系、Webページ作成など)をステップ3で学んだ知識を用いて制作し、改善を繰り返しました。
  5. 評価
    上記の6つ目のプロセスに該当。制作した教材を用いて模擬授業を実施し、生徒役は説明方法や言葉使いなどの項目に従いWeb上でアンケートに回答しました。結果はその場で公表されるため、評価内容と評価対象を結び付けやすく、気付きを多く得られました。

その成果

同一科目で「PBL形式にて授業を実施したクラス」と「従来通りの形式にて授業を実施したクラス」が比較されたました。
問題発見への取り組み姿勢やコミュニケーションの積極性などの20項目について評価したところ、題の発見・解決能力」「自己学習への意欲」などあらゆる点でPBL形式授業の受講者の方が高い結果となりました。

またPSI(Problem Solving Inventory:問題解決技能などに関する35項目の評価)による問題解決力評価を行ったところ、以下の向上が見られました。

  • 問題解決能力
  • 問題に取り組む際の解決することへの自信
  • 難易度の高い問題にも向き合おうとする意欲

学生へのアンケートでも「自分が授業に参加していることが実感でき、積極的に関われた」といった声が挙がっており、主体的に取り組む姿勢を身につけることにも効果を得ています。

千葉大学

実際に行っている内容

千葉大学は「社会環境の向上に貢献する教育」を目指しており、1年間を6タームに分けることで、PBLに必要となる柔軟な学習時間の確保を行いやすい環境を用意しています。

具体的な取り組みとしては、地方創生に際し最も大切な要素である「人」の地方への回帰を促すため、「地域産業イノベーション学」「コミュニティ再生ケア学」において学部・学年問わずPBLを採用しています。
そのうちの一つとして「ローカル・プロジェクト実習」がありますが、これまでに、リノベーションして価値を高めた空き家をサテライトキャンパスとして再利用するプロジェクトなどが行われました。
2019年にはユネスコ世界遺産に登録された「佐原の大祭」を基軸とした観光名所づくりを通して、祭りなどの行事や景観・食といった地域資源の磨き方などを学んでいきます。

その成果

実際に「地域産業イノベーション学」を履修した学生からは、「現場関係者へのヒアリングなど様々な交流を持つことで、地元で働く人の意識を学ぶことができた。」、「地元に帰った際は実習する中で得た経験を活かして働きたい。」といった感想が述べられています。
PBLで学ぶことにより、地域コミュニティにおける生き方を模索するうえで必要な知識や経験が得られると言えます。

福岡工業大学

実際に行っている内容

福岡工業大学では小樽商科大学と同様に実践体験型のPBLに取り組んでいます。
1か月に渡るインターンシップを通じて、傍観者ではなくパートナーとして企業と数値目標を共有し、地元企業が直面している課題(ステム開発会社における高難易度の案件など)の解決に取り組んでいます。
この過程で「正解のない問題にも臆することなく取り組み、解決する能力を有する人材」の育成を目標としています。

その成果

参加した学生からは、仕事に対する責任感や課題解決に取り組む中で得られる充実感を強く感じることができたという声が挙がっています。インターン期間中だけでなく、終了後も「普段の授業に意欲的に取り組めるようになった。」「漫然と授業を受けるのではなく、自分の目標達成に結び付くかどうかを考えて能動的に学ぶようになった。」など、PBLの目的である能動性を身につけ、自身の生活や今後の人生に対して主体的に向き合い行動することができるようになりました。

新潟大学

実際に行っている内容

インターンシップでは新潟市民と小学生を対象とした体験学習講座の企画と運営を行っています。
まずは現場について学ぶために学習支援から参加し、以下のサイクルを回すことで問題解決能力の向上を図ります。

  1. プログラムを企画・運営
  2. 結果のまとめ・振り返り
  3. 課題の洗い出し
  4. 「3.」を踏まえた企画の練り直し
  5. ブラッシュアップした企画の再提案

事前学習期間が3か月設けられており、段階を追って以下の内容を取り組んでいきます。

  1. 志望動機や目的の確認
  2. 課題の把握
  3. ビジネスマナーの基礎研修
  4. チームビルディング研修

事前学習を終えると1か月の実習期間を以下のスケジュールで過ごしていきます。

第1週目:市民・小学生向け体験講座の支援。
第2~3週目:企画を提案するにあたって必要な調査やその結果の考察をして、課題を把握。その後は把握した課題を元に企画した講座を実践。
第4週目:新たに体験講座の企画提案をまとめて、事業所でプレゼンテーション開催。

その成果

PBLを取り入れたインターンシップを行うことで、学生が自発的に自身と向き合えるようになり、弱みや強みといった自己理解が深まりました。それだけでなく、インターン前後のCANチェックPROGテストの結果を比較した際には、実社会に出てから特に必要となる企画力・コミュニケーション能力などの向上が見られました。
また、投げ出さずに考える力・協力して取り組む力など社会人として必要となる基礎力を身に着けることができたという、学生のアンケート結果もあります。

PBLの今後の課題

大学におけるPBLの有用性は認められているものの、以下の理由から導入する際のハードルは高いものになってしまっています。

  • 導入に必要な情報の入手先が知られていない
    成功事例としていくつかの大学を上記で紹介しました。しかし、これらは教員個人の人脈と努力に依存してしまっている、というのが現状です。PBL のさらなる普及・発展のためにも、各々で管理しているノウハウの可視化や広い範囲での共有を行い、個人に依存する状況を打破することが必要です。
  • 大学がオープンに利用できる教材が少ない
    実践型のPBLは社会に出るにあたって必要な能力を身に着けるのに有用ですが、使用する教材が提携企業からの提供物である場合は、再利用にあたり知的財産権などへの配慮が必要となります。
    このことが PBLを導入する際の大きな課題となっており、誰でも自由に利用できるオープンな PBL 教材の開発が急がれます。

また、その他にも以下のような課題があり、今後一層の普及・発展をためにはこれら一つ一つに対して解決していくことが必要です。

  • ノウハウを共有するコミュニティや、より洗練させたノウハウを生み出す可能性のあるカンファレンスが存在しない
  • PBL に関する Faculty Development(大学教員の教育能力を高めるための実践的方法)カリキュラムの開発
  • PBL の教育効果を測定するためのツールの開発
  • PBL に特化したスキル標準の策定

まとめ

ここまでPBLを導入した各大学での取り組み内容・効果、それに加えて今後の課題についても紹介してきました。

PBLは発展途上の教育手法であり、多くの課題を抱えている一方で、今後の日本を支えていく人材を育成する手法として大きな可能性を秘めているのも事実です。
今後広く普及していくことが期待されるPBL。スムーズに従来型の教育から移行できるように、まずは家庭でPBLを意識した教育を取り入れてみるのも良いかもしれません。

お近くにPBLを取り入れた教室がない場合は、スタスタLIVEにご相談ください。

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