高校での探究学習について詳しく解説|文部科学省が高校で科目化した新しい教育

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スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
キーポイント

✔総合的な探究の時間とは、生徒の心や身体を健やかに育む事を目的に導入された。

✔探究の時間を通して「社会貢献のやりがいを学べる」「生徒の自信を育む」などのメリットがあるので、高等学校に導入された。

✔「教職員の指導力の向上」「地域との連携基盤を整える」などの課題がある。

「総合的な探究の時間」という新たな授業の概要が文部科学省によって公表されています。しかし、文科省の資料は専門的な用語が多く、どんな授業であるのかよく理解できなかったという方もいるのではないでしょうか。今回は、「総合的な探究の時間」の概要を目的・導入した理由・メリットなどを踏まえてお伝えしていきます。

総合的な探究の時間とは

「総合的な探究の時間」は学習指導要領の改訂にともなって2022年度から登場する授業です。具体的には、高校のカリキュラムに組まれている「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変わることになりました。

授業は、学習者が主体的にテーマを決定し、それを解決する形式に基づいて行われます。情報収集や情報分析力を培わせることが主目的です。

ただ、この形式は従来の「総合的な学習の時間」で行われていることと類似しています。いったいなぜ授業名が変更されたのでしょうか。それを知るには従来の「総合的な学習の時間」について振り返る必要があります。

そもそも総合的な学習の時間とは?

「総合的な学習の時間」は、変化の激しい社会に対応できるように、自ら課題を見つけ、自ら主体的に考え、問題を解決する能力を育てるために創設された授業です。

この授業で探究経験を積んだ生徒ほど各教科の正答率が高い傾向にあることがわかってきています。それを裏付けるかの如く、OECDが実施する学習到達度調査(PISA)でも好成績の生徒が見受けられ、この授業の果たす役割の重要性が国際的にも評価されているのです。

新たな授業名に変更された理由

しかし、「総合的な学習の時間」には複数の課題が見受けられています。学習過程の情報分析やまとめかたが不十分であることや、各科目との関連付けがうまくいっていないことなどです。

それらの課題もあって、「総合的な学習の時間」の意義を改めて考えてもらう機会を増やすために、「総合的な探究の時間」にリニューアルされたと考えられます。

総合的な探究の時間の目的・目標

「総合的な探究の時間」の概要についてお伝えしましたが、その科目が果たす役割に期待が高まった人もいるのではないでしょうか。

ただし文部科学省が分析しているように、前身にあたる「総合的な学習の時間」では複数の課題が発生したことを踏まえると、「総合的な探究の時間」も目的や目標を明確にしなければ、授業が形式的なものになり、学習効果が薄れてしまいかねません

ここからは「総合的な探究の時間」の目的や目標を深掘りしていくことにします。

目的・狙い

教育基本法や学校教育法によって築かれた教育基盤のもと、生徒がよりよい社会を実現できるように、それに必要な能力や資質を育成するという狙いがあります。また、生徒の学力を確かなものにするために、知識の理解の質を高めるのも狙いの一つです。

そのほか、道徳教育や体験活動を通じて、知識だけでなく心や身体を健やかに育むことも、見過ごしてはならない目的とされています。

目標

文部科学省が定める目標は、探究の考え方や見方に基づいて横断的・総合的な学習をさせることで、課題を発見して解決する能力や資質を育むことです。では、どのような資質や能力を育んでいけばよいのでしょうか?

具体的な能力と資質

主に3つに分かれます。まず、課題の発見と解決に要する知識と技能が求められています。従来はどのような知識を獲得すべきか明確にされていませんでした。それを踏まえて文部科学省は、学んだ知識は実生活や実社会の課題解決に役立つものであるべきだと改めて言及しています。

次に情報収集・情報整理・情報分析の過程を経て、結果を適切にまとめてわかりやすく表現する力です。これらの能力は方法を教えられて覚えられるものではなく、探究活動を通して考える、判断する、表現することを通して身につけるべきものだとされています。

最後に主体的かつ協働的によりよい社会を実現しようとする態度も挙げられます。具体的には社会を構成する一員としての自覚や、進んで社会と接点を持って参画しようとする思いなどです。

文科省が高等学校に導入した理由

「総合的な探究の時間」は高等学校で導入されることになったとお伝えしました。しかし、なぜ高校が対象となっているのかについて疑問をお持ちの方もいることでしょう。ここからはその理由について背景とメリットの観点からご説明します。

背景

「総合的な探究の時間」は、一見時期に関わらず効果が期待できそうですが、なぜ、高等学校に導入されたのでしょうか?

その理由は、高校生になると大人の社会でどのように生きていけばよいのかという課題に直面する傾向にあるからです。大学受験をする際には学部と学科を選ぶ必要があります。それに伴い自分は何を学んで将来どのような仕事をするのかを考えなければなりません。

また高校生の中には大学に進学をせず、卒業後に働き始める生徒もいます。そのような生徒は、この傾向が特に顕著といえるでしょう。

しかし大きく力が開花する時期であるにも関わらず、目先の快楽を優先して無為な時間を過ごしてしまう高校生も残念ながらいます。

「総合的な探究の時間」は主体的によりよい社会を実現していく態度を養うことを目的としています。したがって、そのような高校生が将来のことを考えるきっかけを与えるのに適した学習スタイルです。それもあって、高等学校に導入されたという見方もできます。

メリット

社会貢献のやりがいに気づける

「総合的な探究の時間」では、課題の発見や解決を行い、その結果をわかりやすく他者へ伝える作業を通して、社会で必要となる問題解決力を養っていけるというメリットがあります。しかし、その問題解決力を培えたとしても、社会に貢献したいという態度が身についていなければ、自己の利益のためだけにその力を使う人物になってしまう可能性も考えられなくありません。

したがって、問題解決力とともに社会貢献をする意義について学ぶことが不可欠です。その点、「総合的な探究の時間」では他者と関わるグループワークが多い傾向にあります。

グループワークを通して一人では解決できないことも、他者と協力すれば解決できることを体感できるのです。時には課題が難しく、他者と苦労して解決をした際に達成感や充実感を経験することもあるでしょう。

このように、同じ課題を他者と協力して解決していく過程は、社会人が仕事を行う過程と類似しています。「総合的な探究の時間」を通して、高校生の段階で社会貢献のやりがいを肌で感じられるのは、それぞれにとって貴重な経験となりうるでしょう。

自分自身の価値を確かめられる

「総合的な探究の時間」のメリットとして期待できるのが、生徒の自信を育めることです。

従来の授業では教師から一方的に知識を伝達されるスタイルが一般的です。定期的にインプットした知識をテストの答案用紙にアウトプットして、それを得点化して到達度を確認します。

しかし、単に覚えたことを答案用紙に記載する作業をしても、実生活では何も役に立ちません。保護者はそれで喜ぶかもしれませんが、社会的には誰も喜ばないのは明らかです。

これでは、生徒の自信を育むことは難しいでしょう。その点について、文部科学省も危惧しています。さまざまな国際調査の結果から、日本の高校生は諸外国と比較して自己肯定感が低い傾向にあるからです。

「総合的な探究の時間」では、学んだ知識を活用して問題を解決します。学んだことを活用して他者と一緒に難題を解決できた経験は、高校生にとって大きな自信になることはいう間でもありません。「勉強すれば誰かの役に立てるかもしれない」という気づきをもたらし、各科目への学習意欲を高める効果も期待できます

現状と今後の課題

従来の総合的な学習の時間では、学習過程の情報分析やまとめかたが不十分であるなどの課題が見られました。同様に「総合的な探究の時間」でも、カリキュラムの導入にあたってさまざまな課題が山積しています。ここからはどのような課題が予期されているのかをご説明しましょう。

教職員の指導力向上

「総合的な探究の時間」の目標を達成するには生徒の努力はもちろんのこと教員の高度な指導力も欠かせません。授業を実りあるものにするために、従来とは異なる指導計画の作成や、評価力、学習内容の企画力なども要求されます。

また、教員自体が「総合的な探究の時間」についての意義を把握し損ねる可能性もなくはありません。そのため、指導者の間で文部科学省の学習指導要領を研鑽しあうなどの研修をする必要も出てきます。

このように、生徒の学習環境を整えるだけでなく、教員全体の指導力を向上させる必要がある点も課題といえるでしょう。

地域との連携基盤を整える

外部と連携を取る必要があるのも「総合的な探究の時間」ならではの特徴です。地域との関わりの中にこそ実生活・実社会に根差した課題が横たわっています。そのため、学習効果を高めるためにも、地域における外部施設や外部機関などの協力を得られる環境が望ましいといえるでしょう。

ただ、地域からの信頼というものはすぐに獲得できるものではありません。地域の人々と日常的な接点を増やしていくことや、連携をする上で起点となる担当者や組織を設置するなどの対応策が今後必要になると考えられます。

充実した学習環境の整備

「総合的な探究の時間」では、授業を聞いて黒板を模写するという形式とは打って変わり、多種多様な学習方式が取られることがあります。学習環境が充実しているほど、より効果的な学習を展開できるのは言うまでもありません。では、どのようなものが必要となるかを具体的に挙げてみましょう。

調査活動に必要なデジタルカメラやデジタルビデオカメラ、映像・音声を編集できるようなソフト、プレゼンテーションに必要なプロジェクターなどがあります。

このように学習を進める際に必要となるものは際限がありません。授業の導入までに学習環境を整えなくてはならないのは、各学校にとっては大きな課題といえるでしょう。

まとめ

以上、「総合的な探究の時間」の概要についてご説明しました。導入される背景や、授業のメリット、今後の課題などについて大枠を理解していただけたかと思います。

「総合的な探究の時間」は生徒にとって自身の学力高めることはもちろん、社会性を身に着けるうえでも効果的です。しかし、うまく活用できなければ単に時間の浪費となってしまう可能性もあります

現在、「総合的な探求の時間」の導入にあたって、その授業について分析している塾も多い傾向になってきました。「総合的な探究の時間」について詳しい話を聞いてみたいとお考えであれば、ぜひ塾コンシェルジュにご相談ください。「総合的な探究の時間」に詳しい塾をご紹介させていただきます。

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