大学入試において、近年募集枠が拡大傾向にある推薦入試。ただし推薦入試と一口に言っても様々な種類があり、それぞれで特徴が異なるという点には注意が必要です。
そこで今回は「公募推薦入試」「指定校推薦」「自己推薦入試」の3つの推薦入試について特徴やメリット、デメリットを紹介していきます。
目次
公募推薦入試
様々な種類がある大学の推薦入試。その中の1つである公募推薦入試とはどのような試験方法なのでしょうか。その特徴やメリット、デメリットについて説明します。
公募推薦入試とは
公募推薦入試の特徴を以下の表から確認してみましょう。
受験資格 | 誰でも可能 |
試験時期 | 11月以降 |
合格率 | 30~70% |
選抜方法 | 自己推薦書・調査書・英語・口頭試問・小論文・面接・課題など |
併願の可否 | 可能 |
公募推薦では、大学が求めている基準を満たしていれば誰でも受験することができます。一般的に、公募推薦は国公立大学の推薦入試の試験方法ですが、私立大学の推薦入試としても用いられています。
公募推薦には一般推薦と特別推薦の2種類があります。それぞれ以下のような試験です。
- 一般推薦:主に評定平均値を評価基準とする推薦試験。
- 特別推薦:主にスポーツや文化活動における実績を評価基準とする推薦試験。
どちらの推薦方法でも、出願のほかに面接や小論文などの試験が課せられます。国公立大学の場合には、センター試験が課される場合もあります。
なお大学側が提示する受験資格はありませんが、出願にあたって高校の学校長からの推薦が必要です。そのため、だらしなく高校生活を送ってきたという生徒の場合、公募推薦入試を受けられない場合もあるので注意が必要です。
メリット
公募推薦入試のメリットは「誰でも受験ができること」「受験するチャンスが増えること」「実力以上の大学を狙えること」です。それぞれのメリットについて、説明いたします。
- 誰でも受験ができる
公募推薦では、基準さえ満たせば誰でも受験が可能です。例えば指定校推薦の場合は、自分の通う高校が大学の指定校になっていない場合、当然ですが受験はできません。それに比べると、門戸が広く開かれている点が大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、学校長からの推薦を受けられなかった場合は受験できません。
- 受験するチャンスが増える
指定校入試とAO入試は、一部の高校生しか挑戦できません。しかし公募推薦は説明の通り、誰でも受験が可能です。そのため、公募推薦に申し込むだけで、受験するチャンスを掴むことができます。
また公募推薦で不合格となってしまった場合でも、一般入試で同じ大学を受験することももちろん可能です。一般入試は学力をフラットに測る試験ですので、公募推薦の結果により、有利不利となることはありません。
- 実力以上の大学を狙えること
一般入試では学力的に目指すのが難しい大学でも、公募推薦ならば合格できる可能性があります。それは、学力を測る試験がほとんどないためです。人物評価が重視される試験のため、きちんと高校生活を送ってきたならば、自分の偏差値よりも上位の大学に合格できる可能性も十分あるのです。
デメリット
公募推薦入試のデメリットは「全員が合格するわけではないこと」「対策が難しいこと」「一般入試の準備が遅れること」です。それぞれのデメリットについて、説明いたします。
- 全員が合格するわけではないこと
指定校推薦の合格率が99%とも言われています。それと比較すると、公募推薦の合格率は30~70%。入試は競争ですから、当然不合格になるという可能性もあります。
- 対策が難しいこと
一般入試は、大体どのくらいの点数をとればいいか、どんな勉強をすればいいかという検討をつけやすいですね。しかし、公募推薦では小論文や面接などが課せられます。小論文や面接は採点者、面接官との相性次第の水ものとも言われており、非常に対策が難しい面は否めません。
- 一般入試の準備が遅れること
公募推薦のための準備をしていると、当然ですが、その時間は一般入試のための準備ができません。公募推薦で不合格になった場合には、一般入試一本で準備をしてきた生徒とも学力勝負をしなければなりません。学力は取り組んだ量がモノを言う面も大きいので、不利な勝負を強いられることは間違いないでしょう。
指定校推薦
大学の推薦入試には様々な方法があります。その中の1つが指定校推薦。どのような試験方法なのか、その特徴やメリット、デメリットについて説明します。
指定校推薦とは
受験資格 | 所属高校の推薦者に選ばれた生徒 |
試験時期 | 11月以降 |
合格率 | 99% |
選抜方法 | 面接・小論文 |
併願の可否 | 不可能 |
指定校推薦は、大学側が指定した高校の生徒にだけ出願資格を与えるという方法です。推薦枠にも限りがあるので、希望者が複数以上いる場合には、高校内の生徒の選抜が行われることになります。
例えば、早稲田大学に指定校推薦で行きたいという場合には、以下の条件をクリアする必要があります。
- 自分の高校が早稲田大学から指定を受けていること
- 高校からの推薦者に選ばれること(推薦枠以上に希望があった場合は、校内選抜あり)
指定校推薦は国立大学では実施しておらず、公立大学及び私立大学のみでの実施となっています。
メリット
指定校推薦のメリットは「合格率が高いこと」「自分の実力以上の大学を目指せること」「受験料を抑えられること」です。
- 合格率が高いこと
指定校推薦の最大のメリットは、合格率が高いことです。合格率は99%とも言われており、よほどのことがない限りは不合格になりません。
- 自分の実力以上の大学を目指せること
指定校推薦では学力試験が課せられません。評価の対象となるのは、高校の先生からの評価(評定)です。つまり保護者の方が見る通知表の成績が合否を決めます。そのため、多少勉強が苦手という生徒でも、日々の生活をきちんとこなしていれば、高校からの推薦を受けられる可能性は高まります。
偏差値が55くらいの生徒でも、偏差値が60、65といった上位の大学に指定校推薦で合格したという例は少なくありません。
- 受験料を抑えられること
一般入試を受ける場合、1大学1回の試験につき、3万円程度の受検料が課せられます。当然、1大学しか受験しないということはなく、多くの生徒が5回、10回と入試に挑戦するものです。すると、その分だけ受験料はかかることになります。
1つの合格を勝ち取っても、まだ挑戦したいという場合は、滑り止めの大学に入学金を振り込んでおくというようなケースもあります。
しかし、指定校推薦はほぼ100%合格が決まっているので、何度も何度も受験料を支払う必要がありません。大学入試を3~4万円という安い金額で終わらせることができ非常に経済的です。
デメリット
指定校推薦のデメリットは、「入学辞退ができないこと」「入学後の学力が周囲に比べ劣りがちなこと」「校内選抜で漏れる可能性があること」です。
- 入学辞退ができないこと
指定校推薦で合格した場合には、絶対にその大学に進学しなければなりません。指定校推薦は、大学と高校の信頼関係のもとに成立している制度です。入学を辞退するようなことがあると、推薦した高校の顔に泥を塗ることになり、後輩たちの推薦枠を奪うということにもなりかねません。
また、入学後の中退も原則NGです。母校の代表者として見られる立場にあるという覚悟がない場合には、指定校推薦を受けない方がいいかもしれません。
- 入学後の学力が周囲に比べ劣りがちなこと
指定校推薦の場合、比較的早い時期に大学に合格することができます。しかし、その後の意識次第で、大学の授業がスタートした時に大きな差が生じることになります。
その理由は、新入学生のほとんどが学力のみが問われる一般入試を勝ち抜いてきているためです。入学の1~2か月前まで、毎日猛勉強に励んできたような人たちと同じレベルで授業を受けなければなりません。
指定校推薦で合格して入学が決まっても、毎日コツコツと勉強をしていく意識がないと、入学後に大変なことになってしまいます。
- 校内選抜で漏れる可能性があること
大学から高校への推薦枠の割り当ては無数にあるわけではありません。推薦枠以上の希望があった場合には、校内選抜が実施されることになります。
校内選抜で漏れた場合には、当然ですが一般入試に臨まなければならなくなります。万が一の場合に備えて、一般入試の学習も進めておくことが大切です。
合格率はほぼ100%といっても、指定校推薦を受けられるかどうかは100%ではありません。そのため校内で競争が生じる可能性も、念頭に置いておかなければならないでしょう。
また、場合によっては、友人や思いを寄せる人との争いになることもあります。校内選抜の結果次第で、その後の人間関係に亀裂が入るということも、絶対にないとは言い切れません。
自己推薦入試
最後に取り上げるのは自己推薦入試です。どのような試験方法なのか、その特徴やメリット、デメリットについて説明します。
自己推薦入試とは
受験資格 | 誰でも可能 |
試験時期 | 11月以降 |
合格率 | 大学により異なる(10~70%程度) |
選抜方法 | 自己推薦書・調査書・英語・口頭試問・小論文・面接・課題など |
併願の可否 | 可能 |
自己推薦入試は、公募推薦と非常に内容が似ている推薦入試です。1つ大きな違いは、学校長の推薦が必要ないということです。
また、求める基準は大学に様々ですが、体育活動や文化活動、ボランティア活動等で特筆すべき実績を残していることも出願の条件になることは多くあります。また、大学入学後にどんなビジョンを描いているのかということが重視されるのも特徴です。
メリット
自己推薦入試のメリットは「学校外での活動が評価されること」「学校長の推薦が必要ではないこと」です。
- 学校外での活動が評価されること
例えば学校外のクラブチームや団体に所属し、特筆すべき実績を残したとしても、それが高校からの推薦材料になることはあまり多くありません。高校側はあくまで、学校内における生徒の様子を評価し、推薦の判断材料とするためです。
高校の部活動には所属しなかったが、高校外の活動で収めた実績を大学入試にも活かしたいという場合には、自己推薦入試を利用するのがおすすめです。
- 学校長の推薦が必要ではないこと
自己推薦入試と非常によく似ている公募推薦入試は、学校長の推薦が必要になります。そのため、万が一学校長が推薦しない場合には、受験をすることができません。
しかし、自己推薦入試は自分で行う手続きがほとんどですので、ほぼ100%受験の舞台に立つことができるのです。
デメリット
自己推薦入試のデメリットは「合格率がまちまちなこと」「対策が難しいこと」です。
- 合格率がまちまちなこと
自己推薦入試は、大学によってその合格率が大きく変わります。例えば、2019年度の早稲田大学の自己推薦入試の合格率は15.6%、東京経済大学の合格率は48%など、ばらつきがあります。一概に合格率が高い、低いとは断定できず、大学によりけりというのが実情です。
ただ、指定校推薦のようにほぼ100%で合格できるというわけではないのも確かです。そのため、不合格になるリスクも十分にあることを念頭に入れて準備をする必要があります。
- 対策が難しいこと
公募推薦入試と同様に、自己推薦入試も何をどこまで対策すればいいのかというゴールが見えづらさが難点です。加えて、何が重視されるのかは、大学によって異なります。そのため、自分が受検したい大学の自己推薦入試の要項をしっかりと読み込み、自分が受検するにふさわしい人物か否かを十分に検討する必要があります。
面倒見のいい高校もあるかもしれませんが、基本的には自分で手続きをする必要もあり、その対策にあたっては躓く場面も多いかもしれません。
まとめ
この記事では、大学入試における推薦入試について、公募推薦入試、指定校推薦、自己推薦の3種類を説明しました。
推薦入試は学力を問われない反面、万が一不合格になった場合には、一般入試の準備が遅れてしまうなどのデメリットもあります。
その高校内で最も優秀と言われるような生徒でも、不合格のリスクに備え、最初から一般入試一本で準備するというケースも少なくないようです。
一つ確かなのは、大学入試は戦略が大切であること。どの受験方法が合格に最も近いのか、よく自分で考えて戦略を練ることこそ、合格への第一歩と言えるでしょう。
推薦入試について何か疑問点や不明点があれば、スタスタLIVEの先生にご相談ください。
的確なアドバイスが貰えます。
✔️推薦入試は3種類存在する。
✔️一口に推薦入試と言ってもそれぞれまったく別物であり、特徴の理解が大切。
✔️自分に合うのは、一般入試・推薦入試どちらなのか戦略的に考えるべき。