「英語民間試験の延期」や「記述式問題の見送り」など立て続けに方針が変わり、結局のところ大学入学共通テストはどうなるのだろうと不安に感じてはいませんか?
そこで今回は、2020年度の大学入学共通テストについて英語・国語・数学に焦点をあてて解説していきます。
目次
大学入学共通テストがセンター試験から変わるポイントは?
問題点や見送りの報道の多い「英語民間試験」と「記述式問題」の2本柱に目が行きがちですが、大学入学共通テストで変わるのはそれだけではありません。各教科の設問方法の変化が予測されています。大学入学共通テストのプレテストを参考に、以下で変更点を教科ごとに説明していきます。
全教科
マーク式設問では思考力を図れるような、改善が試みられています。具体的には、「すべて答えなさい」という解答形式の導入です。
センター試験の設問は、ほとんどが4つの選択肢から1つを選ぶというものでした。そのため答えがわかっていなくても、25%の確率で正解できたのです。一方で、大学入学共通テストでの導入が予測される方法では、解答の幅が広がり、より思考力が求められるようになります。
英語
- 設問が英語になる
- 発音・アクセント・並び替えの問題が消滅
- 筆記とリスニングの配点変更と、それに伴うリスニングの試験時間増加
- リスニングでは音声の再生が1回のみの設問が出題
設問が英語になる
これまでは日本語で書かれてた設問が、大学入学共通テストからは全て英語になります。これにより特に、2020年度の初年度に受験をする生徒は大きな負担となるでしょう。センター試験では設問方法に大きな変化がなく、過去問を解いて問題に慣れておけば、設問を読む必要性は強くありませんでした。しかし2020年度の大学入学共通テストでは、出題形式が変わるため、「この問題はこう解く」と瞬時に決められないでしょう。その点で従来と比べ、より高い英語力を求められるようになると言えます。
発音・アクセント・並び替えの問題が消滅
大学入学共通テストからは、センター英語の冒頭で出題されていた発音・アクセント・並び替えの問題がなくなります。つまり「話す・書く」技能を間接的に測っていた問題がなくなるとも言えるでしょう。英語民間試験が廃止により、別途「話す・書く」技能を測る手段がなくなったため、2020年度は「読む・聞く」技能のみを測るテストになると予測できます。
筆記とリスニングの配点変更と、それに伴うリスニングの試験時間増加
具体的な点数配分・時間の変更については、以下の表を確認してみてください。
センター試験 | 大学入学共通テスト | |
筆記 | 200 | 100 |
リスニング | 50(30分) | 100(60分) |
このようにセンター試験では、筆記とリスニングの比率が4:1でした。一方の大学入学共通テストでは、比率が1:1になります。つまり、リスニングの重要度が非常に大きくなるのです。そのため従来のように文法やリーディングに偏った勉強では、英語で高得点を取るのは非常に難しくなるでしょう。2020年度からは、これまで以上にリスニングへの綿密な対策が必要です。
リスニングでは音声の再生が1回のみの問題が登場
センター試験のリスニング問題は、基本的に全て2回読まれていました。しかし大学入学共通テストでは、求める英語力や難易度に応じて問題の読み上げ回数を変更します。問題によって聞き逃しが命取りになってしまうため、注意が必要になってくるでしょう。
国語
- 実用的な文章が題材に
- 複数の文章を関連付ける問題
実用的な文章が題材に
プレテストでは法的な文書や広報誌など、普段の生活で実際に使用されるようになります。センター試験の現代文で出題されていたのは小説と評論のみであったため、大学入学共通テストからは、これまでと違った実社会向けの視点で文章を読む力を求められるようになると言えるでしょう。
複数の文章を関連付ける問題
センター試験では各大門ごとに単一の文章を読んで、それを基に解答する形式でした。一方で大学入学共通テストからは、複数の文章を関連付けて解く問が出題されます。
数学
- 数学の知識だけでは解けなくなる
知識だけでは解けなくなる
数学ⅠA・数学ⅡBの両者で、これらの特徴は顕著に現れます。設問において会話文や長文が用いられるようになり、その設問に基づいて解法を見つけ出す必要があります。従来のセンター試験が「どれぐらい数学ができるか」を重視していたのに対し、大学入学共通テストでは「どれだけ数学を活用できるか」が重視されるようになると言えるでしょう。
2021年度以降の大学入学共通テストはどうなるの?
2020年度変更点は分かったけれど、それ以降はどうなるのだろうと不安に感じていませんか。そこで以下の表で、現段階での展望を確認してみましょう。
受験年度 | 現在の学年※2019年度時点 | 実施テスト |
2021年度~2023年度 | 高校1年・中学2、3年 | 大学入学共通テスト |
2024年度~ | ~中学1年 | 大学入学共通テスト+英語試験 |
ただし2024年度以降については、まだ先行きが不透明な状態です。これは現在、文部科学省が英語試験について2024年度の導入を視野に入れて、2020年度内を目途に検討していくと発表しているためです。そのため定期的に情報を確認することが求められます。
また記述式問題については、期限を区切らない延期がなされ、そもそも記述式問題を導入するかどうかから検討されます。
英語民間試験・記述式問題の導入が延期・見送りの背景
そもそもなぜ導入されるはずった英語民間試験と記述式問題が見送られたのでしょうか。今後の展望をより掴みやすくするために、ぜひ背景を確認してみてください。
結論から言うと、英語民間試験も記述式問題も導入が見送られる背景は、平等性を担保できる仕組みを整備できていなかったことです。以下でそれぞれについて、解説していきます。
英語民間試験
英語民間試験の導入が延期された背景は、地域・所得格差です。以下でそれぞれ説明してみましょう。
- 地域格差
より具体的に言うと、英語民間試験の選択肢が地方ほど少ないという問題がありました。
この背景は文科省から認定された7つの英語民間試験の会場数が、それぞれ大きく異なるためです。約400会場の英検や、約70会場のTOEFL iBTは、ほとんどの都道府県で受験できます。一方でケンブリッジ英語検定は11会場、TEAP CBTは13教室しかありません。それらの会場は都心部に集中しているため、地方在住の生徒が気軽に受けられる英語民間試験の選択肢が、都心部の生徒よりも圧倒的に少なかったのです。 - 所得格差
英語民間試験の料金も、各試験でそれぞれ異なります。最も安価な受験料は約7,000円ですが、高い試験だと25,000円を超えます。このように試験によって、最大約18,000円もの差が発生するのです。また大学入学共通テストでは、試験2回分のデータを活用できたため、2度受けたならば40,000円弱も費用負担が異なることになっていました。
このような地域間格差を埋める環境の整備ができていなかったため、英語民間試験の導入が延期されました。
記述式問題
記述式問題が見送れられる最も大きな背景は、採点ミスをゼロにすることが出来ないと判断されたからです。大学入試センターは採点者の選抜や検収、増員など採点精度向上に向けた取り組みを進めた一方で、約50万人もの受験者の解答に対して公正かつ平等に採点する仕組みを十分に整えられませんでした。
また他の背景として、採点結果と自己採点の不一致が挙げられます。実際に2度行った調査では、国語において約3割が採点結果と自己採点の点数が異なりました。このことが、受験生の出願する大学選びに支障をきたしてしまうと判断されました。
まとめ
「英語民間試験の延期」や「記述式問題の見送り」にスポットが当たりがちですが、各教科の出題形式も大学入学共通テストへの移行により大きく変わります。これまでとは求められる力が変わっていくので、これまで以上の早めの対策が志望校合格に繋がっていくでしょう。
また大学入学共通テストの対策にあたって通塾を考えている方は、是非スタスタの塾コンシェルジュにご相談ください。あなたにぴったりの塾をお探しします。
参照
- 大学入試センター『平成30年度試行調査_問題、正解等』
- 大学入試センター『平成29年度試行調査_問題、正解表、解答用紙等』
- 文部科学省『大臣メッセージ(英語民間試験について)』
- 文部科学省『萩生田文部科学大臣の閣議後記者会見における冒頭発言』
- スタスタ『大学入学共通テスト プレテストの結果と対策を解説|英語・国語・数学』
✔全教科で「すべて答えなさい」という解答形式の導入
✔英語では「設問が英語に」「発音・アクセント・並び替えの問題が消滅」「筆記とリスニングの配点変更と、それに伴うリスニングの試験時間増加」「リスニングでは音声の再生が1回のみの設問が出題」
✔国語では「実用的な文章が題材に」「複数の文章を関連付ける問題」
✔数学では、「数学の知識だけでは解けなくなる」