「世界の教育ってどうなっているの?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、イギリスの教育制度についてご紹介します。日本が見習いたい「サッチャー教育改革」や、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地域の教育制度について解説していきます。
イギリスってどんな国?
イギリスはヨーロッパに位置し、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4地域からなる国です。
日本と同様、それぞれの地域が自治権を持っているため、歴史や政治だけでなく学校の制度も異なります。学校に通う年齢や教育内容、教育変革の歴史も違うので、それぞれに特徴を持っています。詳しくは、記事の後半でご紹介します。
イギリスの歴史
イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは、それぞれ古くからの歴史を持つ国でした。それらの国が1つの国家として合併した背景には、合併にあたり調印された法律「合同法」が重要です。
イギリスでは、1536年と1543年にウェールズとイングランドが合併を決めた合同法が最初に成立しました。それから150年以上が経ち、1707年にイングランドとスコットランドが合同法を定め、「グレートブリテン王国」に変わったのです。その90年後には、グレートブリテン王国とアイルランドが統合し、現在のイギリスへつながる「グレートブリテン及びアイルランド連合王国」が設立したのです。
4つの地域は、それぞれ1つの国としての歴史を持つ背景があります。そのため、それぞれで政治や教育に関する方針や方法に違いが生まれるという特徴があるのです。
イギリスの政治
イギリスは、主権国家として国として認められています。またイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドも、主権国家ではありませんが、「国(country)」と言われています。
イギリスは現在エリザベス2世を君主とし、立憲君主制に基づいて納められています。「国王は君臨すれども統治せず」を原則としており、政治的な権力を持っているわけではありません。政治の実権は、貴族出身の議員が占める上院と、普通選挙によって選ばれた議員の下院が持っています。上院は議員数が決まっておらず、聖職者や世襲貴族、一代貴族などが終身を任期として議員を務めます。下院は各地域から選挙で選ばれた議員が5年任期で務めることになります。
一方、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれに権限を委譲され、自治権を持っています。日本で言えば、地方行政のようなイメージです。各地域が議会や国民党を有し、主権国家を目指す独立運動などが起こってる地域もあります。
イギリスの教育システム
イギリスの教育システムは、日本と少し異なります。そこでは、イギリスの義務教育についてご紹介します。4地域で異なる部分もあるので、違いについても簡単にご説明します。
学校に通う年齢
学校に通う年齢は地域によって少し異なり、就職が可能な年齢も異なります。
地域 | 学校に通う年齢 | 16歳以上で選択できる内容 |
イングランド | 5 ~ 18歳 |
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スコットランド | 5 ~ 16歳 |
|
ウェルズ | 5 ~ 16歳 | |
北アイルランド | 4 ~ 16歳 |
基本的に小学校・中学校・大学となっていて、日本でいう高校がありません。また小学校に入学する際には、「文章で話せる」「アルファベットが全てわかる」「基本的な読み書きができる」というスキルが必要になります。
学生生活の内容
イギリスの学校は9月スタートし、翌年の7月に学年末を迎えます。課税年度は日本と同様に4月始まりですが、学校が9月始まりになっています。中学校では以下の科目を勉強します。
学年 | 科目 |
7~9年生 |
|
10年生 |
必修科目に加えて、選択科目 |
教育改革の背景
イギリスでは、「英国病」と言われる自虐的偏向教育が行われていました。1944年に変更された教育法は、「児童の権利を尊重する人権教育の推進」「イギリス帝国主義批判の歴史教育の推進」「教師の自主性を尊重する教育行政の確立」を三本柱として掲げられました。
1960年になると、インドなど独立した国が増え、移民が急増しました。その移民の支持を獲得しようとした労働党によって、大英帝国やキリスト教を非難する「英国病」が深刻化していったのです。この英国病を変えようと、教育改革を行ったのがサッチャー政権でした。
イギリスの教育方針は、日本と似ている部分があります。日本は戦後GHQによって「日本は侵略国家である」という洗脳をする”自虐史観教育”が行われていました。また1982年には大手新聞の誤報をきっかけに、中国や韓国が日本の教育に対して干渉するようになったのです。そのため子供たちは「日本は悪い国である」という印象を持つようになり、自国にほこりが持てなくなったのです。
このように「自国が悪者」という印象を子供に与える教育は、イギリスと日本の共通点と言えます。
サッチャー教育改革
サッチャー教育改革とは、1979年に成立したサッチャー保守党政権によって行われた教育改革です。自虐的偏向教育をやめ、宗教を中心とした教育でイギリス復活を試みました。
具体的には、歴史教育においてナポレオン戦争における功績や奴隷貿易廃止など、イギリスの歴史における光を学習することに重きがおかれました。これによって、自分の国を誇りに思う人が増えるようになったのです。
特徴的なポイントとしては、「教育内容の統一」や「学校の自律性」などが挙げられます。そして、これらの政策は自虐史観の日本が見習いたい教育方法と言われています。
GCSEが導入されて教育内容が定められる
子供の学力向上を目標として、「教育内容の共通化」が行われました。以前は設けられていなかった基準を設定し、全国共通の指針や教科のガイドラインなどを作成しました。さらに教育課程の共通化を徹底するため、大きな影響を与える16歳試験を1つにする必要があるとしました。大学進学希望者と就職希望者で異なっていた2種類の試験を廃止し、「中等教育修了一般資格試験(GCSE)」が導入されました。
それぞれの学校に自律性を持たせた
当時、教育に関して権限を持っていた地方教育当局を縮小化し、各学校に自律性を与えるという方向性に変わりました。
地方教育当局は、地域における教育の提供義務を持っていました。そのため学校の整備や維持、子供や親への対応も行っていたのです。しかし政党に支配された組織であったため、サッチャー教育改革ではこの地方教育当局の権限を弱め、中央政府の権限を強化しました。それによって、教育界の「競争」と「選択の自由」が推奨されていきました。
それぞれの学校に自律性を持たせるため、学校理事会には財政運用の権限や教員の任免権が与えられました。地域によっては決められた範囲を学習していれば、学校によってカリキュラムや学習手順を決めることができるようになったのです。
日本が見習いたい見本とされている
日本は「自国を悪い国」と教えている点がイギリスとの最大の共通点です。そのため日本国民が自分の国に誇りを持てるように、日本の歴史の光を重点的に教えていく必要があるのです。中韓に干渉させず、日本の教科書内容を見直して、誇りある歴史を学ぶべきだと考えられています。
さらに「学校の自律性が低い」という点も類似しています。教育における「競争」や「選択の自由」を高めるという点でも、イギリスを見習うことができるかもしれません。
イングランド
イングランドは、イギリスの首都「ロンドン」がある地域です。歴史的建造物や博物館など、文化を象徴する観光スポットになっています。イングランドの教育でもっとも特徴的なポイントは、「ナショナルカリキュラム」です。
ここではイングランドの特徴と、教育における特徴である「ナショナルカリキュラム」についてご紹介します。
イングランドの特徴
イングランドは、イギリスの中心となる地域であり、観光スポットも多くあります。
北部にはのどかな湖水地方が広がり、頭部はケンブリッジ大学など産業革命で重要な役割を持っていた工業都市が存在します。中部にはカントリーサイドや田園都市が広がり、人気のコッツウォルズなどの村があります。
また南部は温暖な気候で花や緑が豊富なため、「イングランドの庭」と言われる魅力的な街が多いです。
ナショナルカリキュラムが施行される
2014年にイングランドで、「ナショナルカリキュラム」が施行されました。これは子供たちが平等に学ぶ環境を維持し、学習内容の枠組みを作ることを目的としています。公立の学校に通う5~16歳の子供が対象です。
このカリキュラムでは、学習すべき内容が提示され、学校が独自に構成を考える仕組みになっています。学年や教科に講じて構成し、教科を統合して教えることもできる制度です。
また教科によって達成すべき目標が設定されているので、教科基準も明確になります。子供の理解度とそれぞれのニーズに合わせた教育が可能になるシステムです。
ウェールズ
ウェールズは、長期間イングランドの統治下にある国です。しかし独自のケルト文化が残っており、ウェールズ語を話す人も多く存在します。アーサー王伝説など、たくさんの伝説を生んだエリアでもあります。
ここではウェールズの特徴と、独自の教育改革についてご紹介します。
ウェールズの特徴
ウェールズはグレートブリテン島の南西にあり、アイリッシュ海に面しています。
石炭や銅など豊富な資源を産出しており、イギリスの産業革命を支えたという歴史があります。大都市と言える街はないが、金融や研究などの発展に寄与してきました。
そのためイングランドや北アイルランドからの労働者が増え、ウェールズの人口が増加したのです。
ウェールズでは独自の教育改革が行われている
ウェールズはイギリスの教育体制を取り入れていましたが、1999年に議会と地方政府ができ、ウェールズ独自の教育改革が行われています。
ウェールズはイングランドの「ナショナルカリキュラム」を見直し、学習においては”スキルの獲得”を目指す方針に変更しました。さらに点数ではなく、学習過程の中で生徒にあった評価を教師が行う「ティーチャー・アセスメント」を導入しました。これからの課題を示すことを目的とし、教師は生徒の学習状況を把握するためことが求められるのです。
さらに知識を教えるための授業は、コミュニケーションを取る場に変わりました。それだけでなく生徒の学習状況に応じて、知識とスキルを獲得することを重視する授業スタイルになったのです。
スコットランド
スコットランドはエディンバラを首都とし、グラスゴーなど個性を持った都市が多くあります。さらにダイナミックな自然が都市と共存する地域です。
ここではスコットランドの特徴と、独特な教育目標と方法についてご紹介します。
スコットランドの特徴
スコットランドはグレートブリテン島の北部にあり、イギリス第二の都市であるエディンバラがあります。
グラスゴーは最大の都市であり、人口の40%が住むエリアです。教育制度や裁判制度、法制度は独立しており、スコットランド法や独自の教育制度を持っています。
独特の教育目標と方法
スコットランドは1999年の分権によって、教育権限がスコットランド政府に移り、自由主義の教育改革の見直しが行われました。
スコットランドの教育目標は、「自分たちで考え、答えを探す力を高めること」とされています。その目標を達成するため、教師の教育方法にも特徴があります。探す力を高めることが目標なので、答えを導くことを重要としていません。そのため教師は、答えを教えることはせず、施工とコミュニケーションにって子供が自分で答えを見つけることを手助けします。
つまりスコットランドの独自教育では、「考えさせる授業」を徹底的に広めたのです。
北アイルランド
北アイルランドは、イギリスに最後に編入した地域です。宗教や民族の違いによって独立した歴史を持っています。そのため長年にわたって紛争が続いていますが、現在は紛争が落ち着いています。
ここでは北アイルランドと、教育制度の歴史についてご紹介します。
北アイルランドの特徴
北アイルランドは、イギリス最大の問題と言われる「北アイルランド問題」を抱えています。
紛争問題の総称で、1960年から1990年代にかけて宗教差別を発端としておこりました。経済や政治に強い影響を与え、イギリスの中でも経済規模は最小と言われています。近年ではイギリスとアイルランドが好景気にあり、失業率が改善することによって紛争も落ち着いているのです。
大きな改革はなかった
北アイルランドでは、イングランドやウェールズで導入された「教育改革法」を中心に、人種・宗教差別を撤廃した教育を行ってきました。そのため独自の改革などはありませんでした。
中学校教育を行う11才~16才の子供に対し、自然科学や科学技術に関する授業を積極的に行いました。そして経済やコンピュータに関する知識を高めることで、教育の質だけでなく社会性を向上させることを目指したのです。カリキュラムにおいて、職業や衛生、コンピュータ、相互理解、文化的遺産の6つに関する教育がテーマとして設置され、授業へ反映されています。
まとめ
今回は、イギリスの教育制度や教育改革についてご紹介しました。自国に誇りが持てる教育制度は、今度の日本教育において見習いたい見本となりそうです。
世界の教育制度、特にイギリス教育に関して、疑問を持っていた方のお役に立てたら幸いです。
何か気になることがあれば、お気軽にコンシェルジュへご相談ください。
✔学校のそれぞれに自律性を持たせた。
✔自国の良い所を教えるように方針転換。