近年eポートフォリオは大学入試にも利用されるようになり、大学受験を控えた高校生の間では注目を集めています。
また入試だけでなくその後の大学生活においてもeポートフォリオが活用され、大学での学びの記録がまた就職・キャリアへとつながっていく仕組みができつつあります。
そこで、今回は大学生向けのeポートフォリオサービスについてご紹介したいと思います。
目次
eポートフォリオとは
eポートフォリオ(e-Portfolio)という言葉を最近耳にすることはありませんか。
言葉から、なんとなくイメージはできても、それを誰が何のために活用するのか、取り入れることでどんなメリットがあるのか、具体的にはよく知らない方も多いと思います。
まずは、eポートフォリオとは何かについて簡単に解説します。
eポートフォリオとは「学びの記録」
eポートフォリオとは、簡単に言えば、学生が探究活動や課外活動、資格などの「学び」の記録をインターネット上に蓄積し、教員と共有することで指導や進学、就職に活用するものです。
JAPAN e-Portfolio(運営:文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業・主体性等分野)などの高校eポートフォリオが、平成31年度大学入試より入学者選抜における評価や参考データなどの目的として利用されることになっていて、大学受験を控える高校生の間では特に注目されている新しい取り組みです。
eポートフォリオの主な目的は、これからの新時代に向けて必要とされる「主体的な学び」を評価するためですが、これは単に「学び・活動の記録」としてだけではありません。
継続的に個々人のデータを蓄積し、それを効率よく振り返ることで今後の学びや成果を教員と一緒に確認し、さらなる「主体的な学び」につなげていくことができるのです。
大学におけるeポートフォリオの活用
入試だけでなく大学入学後もeポートフォリオを導入し、グループワークなどの講義やレポート提出、教員からのフィードバックなどに活用している大学も多くなってきました。
これは単純にデータ化することで生徒と教員、生徒と大学とのやりとりがペーパレスで管理がしやすくなるというインターネットサービス特有の利点も大きいでしょう。レポートの作成や提出、評価、蓄積などもeポートフォリオが活用されています。
また大学での講義やゼミなども、もっと主体的な学びを後押しするものにしていきたいという想いから、eポートフォリオを積極的に取り入れ、大学内の学び改革に役立てようとする大学も増えてきました。これは教員側にも様々なフィードバックが得られることから、授業改善などに役立てられるような活用の仕方もされ始めています。
さらに、大学生活ではさらに多くなってくる講義外での課外活動や大学外での学びや活動についても記録し、蓄積できる点にも注目されています。
まさに社会に出る一歩手前の大学生時代、何に関心を持ち、どんなことを学んできたのかをきちんと記録して積み重ねていくことで、その成果や達成状況を振り返って客観的に把握し、また次につなげていくことができるのです。
就職・採用でも注目されつつあるeポートフォリオ
こうした大学生活における学びが蓄積されたeポートフォリオは、就職活動時のエントリーシートを作成する時に非常に大きな力を発揮してくれます。
就職活動で書かなければならないものは山ほどありますよね。今まではそれを就活ノートやキャリアプランとして、一から思い出し、振り返り、引っ張り出し…ということをしていましたが、eポートフォリオには4年間の自分の学びの記録がしっかりと蓄積されているので、そこから抜き出していくだけで簡単にエントリーシートを書いていくことができます。
もちろん自分の学びの記録を振り返ることで、自分自身がどんな風に考え、成長し、何に関心を持ち、何がしたいのかを見つけ出す材料にもなります。
就職活動支援やキャリアデザインの担当教員も、学生のeポートフォリオを閲覧することで、より具体的で適切なアドバイスをすることができるようになります。
またeポートフォリオは教員だけでなく、企業の採用担当者が閲覧することもできます。
学生は今までの自分の成果(レポートやプレゼン資料、制作物などの作品など)をeポートフォリオにアップしておくことで、企業がそれらをチェックし、インターンシップや採用などのスカウトをしてくるということも起こってます。企業としても、就職活動時の書類や面接の一時だけでなく、日々の学びの意欲や関心を追うことで、より企業に必要な人物像を見つけ出すことができるのです。
こうして学ぶことと、働くことがeポートフォリオでつながり、未来へとリアルに導いてくれるようになるのですね。
大学生向けのeポートフォリオサービス一覧
Pholly(フォリー)
日本事務器が提供している教員と学生のコミュニケーション型授業支援システムのeポートフォリオです。教育機関だけでなく、企業などでも導入されています。
誰もが利用しやすく、コミュニケーションが取りやすいことを重視しています。そのため、PCだけでなく、スマホやタブレットでも自由にいつでも手軽にアクセスできます。
Phollyの特徴は主に以下の3つです。
- 提出レポート確認:学生がレポート課題の提出期限を確認したり、レポートの評価や教員のコメントを確認できる
- 講義内容確認:教員がシラバスや授業スケジュールなど学生に見せたい広義情報を確認できる
- グループワーク:学生や教員がテキストチャットやファイル共有など、グループワークをSNS感覚で使える
導入大学:香川栄養学園女子栄養大学、北海道文教大学、日本文理大学など
manaba
朝日ネットが提供しているeポートフォリオの教育支援サービスです。主に大学で活用されていて、学生と教職員双方の学びをサポートする仕組みとなっています。
Manabaには、主に以下の2つの機能があります。
- 学習管理システム(LMS):レポート管理や資料配布、情報発信ができる機能
- ポートフォリオ機能:学生がレポートや成績、教員からのコメント、グループワークの記録などを蓄積・参照できる機能
大学を中心とした教育機関で数多く導入されていて、大学内の全学部で導入している大学だけでも90校に上っています。(2019年4月時点)
導入大学:立命館大学、筑波大学、東洋大学、中央大学、日本女子大学など約90校 (全学部で導入)
Web Class
日本データパシフィックが提供している日本の大学向け授業支援システムです。講義中でも活用できるようなe-Learningの機能と、学習記録データをわかりやすく蓄積できるeポートフォリオの機能が織り交ざっています。
Web Classには、主に以下の3つの機能があります。
- eポートフォリオ機能:蓄積した学習データを評価と一体化させて記録でき、そのプロセスや成果を可視化できる機能
- アクティブラーニング支援機能:生徒が主体的に学び、振り返り、気づきを促すための機能
- 教材作成機能:教員が簡単に教材やテストを作成できる機能
導入大学:追手門学院大学、大阪市立大学、名古屋文理大学、金沢大学、大阪産業大学など
Unified-One e-Portfolio
富士通が提供しているeポートフォリオシステムです。富士通ではこれも含めた大規模な大学向けのソリューションシステムを提供しています。
製品コンセプトとして「リアルコミュニケーションプラットフォーム」を掲げ、リアルで「会う」前後のサポートをすることに主軸が置かれています。機能としても、学生がインプットした学習データ等を見て、いかに教職員が効率的に学生を見つけ、深く知り、指導やフォローに役立てるかという教職員の学生管理ツールとして注力したものが多い印象です。
以下のような機能が搭載されています。
- 照会機能:学生起点で横断的に学生の成果を可視化
- プロフィール機能:情報の変化を素早くとらえ、学生をタイムリーにサポート
- ポートフォリオ機能:学生がインプットした学修状況を分析・可視化し、面談に活用
- ノート機能:指導状況や面談記録をデータ化し教職員間で情報共有
- メッセージ機能:学生と教職員間のコミュニケーションツールとして
導入大学:文教大学、広島国際大学、青山学院大学、大阪教育大学など
Prime Learning
SCSKが提供している大学向けの学習管理システム(LMS)のeポートフォリオです。同社は他にも大学向けの学務情報システムを提供していて、そのプラットフォームにプラスする形でeポートフォリオシステムも提供するようになりました。
Prime Learningには主に以下の4つの機能があります。
- ルーブリック管理:評価項目や到達度を設定し、視覚的に自身のレベルや目標到達度の把握、管理ができる
- コンテンツ管理:さまざまな学習成果や活動履歴を管理し、視覚的に表示することができる
- ポートフォリオ機能:蓄積されたコンテンツから自由にレイアウト表示して必要な情報の整理ができる
- 自然言語分析:登録データの自然言語処理を行い、ネガポジ分析や結果をグラフ化し、振り返りができる
導入大学: *学務情報システム等の導入を含む
埼玉大学、金沢大学など
まとめ
いかがだったでしょうか。
各社のサービスはベースとしては講義やレポート、グループワーク等の作業効率化や学生管理、コミュニケーションツールとしての活用がメインとなっています。それは従来の大学向け学習支援システムを基盤としているためです。それらのベースに近年新たに「eポートフォリオ」という概念・機能がプラスされ、「自分の学びの記録として公開していく・フィードバックを得る」という活用の仕方がされ始めました。
とはいえ、大学でのeポートフォリオへの取り組みはまだ始まったばかりでそんなに普及しているとは言えません。しかし今後、高校でのeポートフォリオが徐々に標準化していくと、その流れを受けて、大学でも導入が進むものと予想されます。
そうして、長い年月の「学びの過程と成果」を一元データ管理することで、自分自身で振り返り、次へとつなげていけるだけでなく、他者からもフィードバックがもらえたり、評価されたりできるようになります。
こうした流れは、これからの教育改革の理念に合致することでしょう。
思考力や主体性が求められるこれからの教育の流れの中で、より多角的に、学びの過程から自律サイクルに至るまで、個人を総合的に判断しよう、評価しようとする時、eポートフォリオのような経年的な学習記録は大いに役立ちます。
試験や就職活動などの一時的な場面だけでの評価ではなく、日々の行動や経験に注目し、学びの姿勢や成果を評価し、これからもずっと学び続けるであろう人材に大きな価値を見出す。そんな手掛かりとして、eポートフォリオはこれから重要視されていくのではないでしょうか。
eポートフォリオについて、ご不明な点などがあれば、お気軽にスタスタコンシェルジュまでお問合せください。
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