イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」は9月12日、16回目となる2020年の「THE世界大学ランキング」を発表しました。
本記事では、このランキングをもとに世界の大学と日本の大学を比較しながら、それぞれの特徴などを解説していきます。
目次
THEとは?
まずTHEとはどんな組織なのかを解説します。THEとは、タイムズ・ハイアー・エデュケーションというイギリスの高等教育専門誌で、イギリスのタイムズ紙が付録冊子として毎年秋に発行してしています。
非英語圏の大学や、資金力のない大学に対する評価基準が低いという見方もあり、THEの評価基準に対して異論を唱えるグループもありますが、依然として日本では最も影響力のある情報機関と認識されています。
世界大学ランキングとは?
続いては、世界大学ランキングについて見ていきましょう。世界大学ランキングとは、高等教育機関を多様な角度から査定し、ランクづけする国際的な大学ランキングのことです。
国境を越えたグローバル教育が盛んになった現代社会における、教育基準の指標の一つとして、学生、研究者、教育関係者を含めた様々な人が参考にしています。
大学ランキングの発行元は、政府や企業、第三者機関および、雑誌新聞などが行っており、特に、世界から信頼度の高い世界大学ランキングとして知られているのが、QS、THE、そしてARWUなどが発表しているランキングとなっています。
THE 世界大学ランキング|2020版
それでは、いよいよTHE世界大学ランキング2020年の調査結果を見ていきましょう。
2004年からスタートしたTHEによる世界大学ランキングは、2020年で発行16回目となりました。
今回のランキングでは、92カ国1,397校が参加しています。
日本の大学のランキング
「THE世界大学ランキング2020」の結果は以下の通りです。
順位 | 大学名 | 国 |
1位 | オックスフォード大学 | イギリス |
2位 | カルフォルニア工科大学 | アメリカ |
3位 | ケンブリッジ大学 | イギリス |
4位 | スタンフォード大学 | アメリカ |
5位 | マサチューセッツ工科大学 | アメリカ |
6位 | プリンストン大学 | アメリカ |
7位 | ハーバード大学 | アメリカ |
8位 | イェール大学 | アメリカ |
9位 | シカゴ大学 | アメリカ |
10位 | インペリアル・カレッジ・ロンドン | イギリス |
(以下日本の大学ランキング) |
36位 | 東京大学 | 日本 |
65位 | 京都大学 | 日本 |
251位~300位 | 東北大学 | 日本 |
251位~300位 | 東京工業大学 | 日本 |
301~350位 | 名古屋大学 | 日本 |
301~350位 | 大阪大学 | 日本 |
351~400位 | 産業医科大学 | 日本 |
引用元:『THE University Rankings 2020』
日本からは、110校がランクインし、昨年より7校増加するという結果となりました。世界のトップ大学と呼ばれる200位内には、東京大学、京都大学の2校のみがランクインしており、他のアジア諸国に比べて、200位内の増加数が少ないという傾向です。
- 日本から110校がランクイン
- 東京大学が日本最高36位(昨年から6位向上)
- 2位の京都大学は65位
- トップ10の顔ぶれは変わらず、アメリカ7校、イギリス3校
- オックスフォード大学は4年連続1位を獲得
- 2位は、前年5位から躍進したカルフォルニア工科大学
- アジアトップは、清華大学の23位
ランクイン数はアメリカに次ぐ2位
続いてTHE世界大学ランキングの結果について、分析してみましょう。
日本は前年度のランクイン数103校から110校となり、イギリスのランクイン数100校を大きくリード。ランクイン数では、アメリカに次いで世界第2位となっています。
トップ200までにランクインした大学数は、イギリスが28校、中国が7校、韓国の6校、そして香港の5校に比べると、日本はたった2校ということで、大きく出遅れた形となりました。ランクイン数では、世界2位と健闘しているものの、200位以内に入れる大学数が増加しないことから、世界ランキングにおけるエリート校の中で、日本の存在感がなかなか示せないという状況が続いています。
母集団の違い
日本の大学は、なぜ世界の大学に比べてトップ200に入れる数が少ないのか、その理由を見てみましょう。
ランキング上位に入っている国の中でも、アメリカは、2年生大学を含めて4600校、中国は2900校という膨大な数の大学があり、母集団の大きさから見ても、ランクイン数が多くなることは納得できます。
一方、イギリスの大学は320校ですが、それに対して日本の大学数は1100校。大学の数だけで比較すると、イギリスは、320校のうち約3分の1に当たる100校がランクインしていることを考えると、イギリスの大学の質がいかに高いかということが分かります。
国際性が低い
ではここから、日本の大学がトップ200にランクインできない原因について考えてみましょう。
日本の大学の評価基準が低い理由として考えられているのは、国際性が低いということがその一因と言われています。
外国人留学生比率
THE世界大学ランキングで、国際性を測る一つの指標が「外国人留学生比率」ですが、日本のほとんどの大学では10%台という低い水準となっています。
トップ10にランクしているアメリカ、イギリスの大学はもちろん、トップ200にランクインしている香港や中国などアジアの大学と比較しても、国際性の低さが顕著です。
被引用論文
それでは、各大学の国際性を示すために重要な指標について見ていきましょう。
世界大学ランキングの指標の一つに「被引用論文」の数も関与しているとの見方が強く、研究影響力の強さが、ランキングでハイスコアを獲得する要因となっているようです。私立大学でトップにランクインしたのは産業医科大学ですが、「被引用論文」のスコアが高かったことがランクインの快挙につながったようです。一見関係ないように見えますが、日本語は、英語や中国語に比べて利用人口が少なく、国際的な学会において論文が引用されるケースはその分少なくなってしまいます。このことも、日本の国際性の低さが原因と考えられます。
ちなみにアメリカはランクイン数172校、うちトップ200に入った大学数は60となっています。この大きな一因となっているのが、被論文数の多さで、アメリカの研究が世界をリードしているという状況が依然として続いてます。
本格的な投資と将来計画が必要
ではTHE世界大学ランキングで日本が上位により多くの大学をランクインさせるために必要なことを考えてみましょう。
THE世界大学ランキングでは、教育、研究、国際性、被引用論文(研究影響力)そして産業界からの収入(知の移転)という5つの指標を元に、大学のスコアを算出しています。日本の大学の国際性を高めるためには、優れた研究者や留学生を誘致できるような、他国との共同研究プロジェクトを増やすなど、国際性のスコアを上げる取り組みが必要です。
そのためには、国をあげての投資と将来計画が必要と考えられます。外国人教員の誘致や、国内学生の英語力の習得率の強化、そして外国人留学生の数をさらに増やしていくなど、今後も各方面からの改善が求められています。
スタスタの解説
最後に、スタスタによる「THE世界大学ランキング」の解説です。
THE世界大学ランキング2020年の結果を見ると、日本の大学が200位以内のランクイン数を上げられない主な要因は「国際化」にあると言えそうです。
2008年、当時の文部科学省が掲げた「留学生30万人計画」により、平成29年末までの段階で、日本に渡航した留学生の数は、約31万人となりました。当初の目標より早く留学生30万人を達成しましたが、まだまだ日本の大学は国際的な評価基準に到達できていない部分も多く見られるようです。
日本の大学の特徴
もう1点、世界大学ランキングの結果から見える国内大学の特徴について述べてみます。
日本の大学の特徴としては、「学習環境」の整備や、「研究力」という部分では、非常に高い評価を受けています。THE国際大学ランキングが独自に行う指標が、単純に日本の大学の査定に不利という見方もありますが、日本以外のアジア各国の大学には、海外から優秀な教授や学生を呼び込むことで、レベルアップを図っている大学も増えています。
日本の大学も、海外からの留学生の受け入れ数を着実に増やしており、国際性は徐々に向上しつつあると言われていますが、国際性の向上については、更なる改善が必要と言えるでしょう。
ランキングはあくまでも1つの見方
ここまでTHE世界大学ランキングについて、解説しました。
しかしTHE世界大学ランキングは、世界の大学を評価するための一つの見方に過ぎず、この指標だけが大学の質を評価するすべてではありません。志望校決定の際に、あまりにもランキングを気にしすぎたり、過信しすぎるのは禁物です。
ただし将来自分が大学で学びたいことが明確に決まっている人は、学問ごとのランキングを参考にしてみるというのも一案です。THE世界大学ランキングは、参考程度にご覧ください。
✔️THE世界大学ランキングは、高等教育機関を教育、研究、国際性などの角度から評価
✔️日本のトップは東京大学(36位/1397校)、次いで京都大学が65位
✔️日本の大学は学習環境の整備や研究力は高評価だが、国際性は改善が必要