実は5回目!? 日本の教育改革の歴史|これまでの日本教育を徹底解説

172-education-history
ABOUT US
スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
キーポイント

✔これまで教育改革は、先の未来に合う人材を育てるため・社会的問題を解決するために行われてきた

教育改革の歴史は「義務教育の導入」「単線型学校制度への転換」「46答申」「ゆとり教育」「2020年教育改革」

2020年教育改革の今までとの違いは、試験形態の変化。

2020年の教育改革を期に、これまでの日本の教育改革について興味を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は教育改革の歴史や背景、詰め込み型教育・ゆとり教育の内容などについて紹介しています。これからの教育について理解を深める上で、歴史を振り返ることは必須事項です。

日本の教育改革について少しでも疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

教育改革の定義

教育改革とは、これまでの教育内容・教育制度を抜本的に変更することです。 社会の動きや流れは時代とともに変化していきます。そのため、未来の社会で求められる必要なスキル・能力等を身につけるために教育改革が実施されます。

最新の教育改革は、アクティブ・ラーニングや大学入学共通テスト、より実践的な英語教育などを導入する「教育改革2020」です。 全体の流れとしては、2018年度から新学習指導要領の移行措置が開始され、2020年度には小学校、2021年度には中学校、2022年度には高校で実施予定となっています。

実は日本では、今までにも教育改革が行われてきました。以下の「5つの改革」という括り方は、公式のものではなく、時代や背景などを含めて便宜上スタスタでまとめたものです。

第一の改革:義務教育制度の導入

第一の教育改革が義務教育制度の導入です。1872年(明治5年)の「学制」において、8年間の教育年限(下等小学校、上等小学校4年ずつ)が設けられました。

全国を学区に分け、それぞれに大学校・中学校・小学校の設置を計画し、身分や性別を区別することなく、国民が教育を受けられるようになったのです。当時の日本では、分岐型学校制度が採用されていました。この制度は初等教育は共通なものの、中等教育以降は進路により、旧制中学校、旧高等女学校、実業学校などに分かれる、というものです。さらに学校によって学習内容や修業年限が異なっていました。

また学制と合わせて発せられた「被仰出書」には、近代教育教育理念が示されています。そこには「商人や武士、農民、男性女性関係なくみんなで学問を学びましょう。学問を学べば将来出世し、豊かに暮らすことができる」とあったのです。ですがこの立身出世の思想が、民衆に普及しなかったことが就学率から分かります。

明治10年時点で男子が56%、女子が22.5%、男女計39.9%でした。この理由として家業の担い手不足、そして学校の設立維持の経費は受益者負担だったことが挙げられます。

背景

義務教育制度が導入された経緯には、「富国強兵」が関わっています。経済と軍事を発展させ国を強くすることで、当時勢力を伸ばしていた欧米諸国に対抗しようとしました。政府はそのためには、国民に教育を施すことが重要だと考えたのです。

第二の改革:単線型学校制度への転換

第二の教育改革は、分岐型学校制度から単線型学校制度への転換です。

戦後の1947年(昭和22年)、「学校基本法」「学校教育法」により、学習内容や修業年限が共通の小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年の六・三・三・四制、いわゆる単線型学校制度へ転換されました。

小学校・中学校が義務教育となったことで、施行以来義務教育年齢にある児童・生徒のほぼ全員が通学しています。しかし高等学校への進学率は、1950年(昭和25年)の時点で約53%でした。

背景

敗戦を機に、日本はアメリカの連合国軍最高指令官総司令部(GHQ)の占領下に置かれることになりました。教育に関する方針や施策も同じようにGHQの支配下にありました。 このときGHQ主導で行われた司令としては、4大教育指令(日本教育制度の管理、教職追放令、神道指令、修身・国史・地理の停止)があります。

また単線型学校制度の導入も、アメリカに倣ったものでした。アメリカの狙いは「全ての子どもたちの教育の機会均等」です。戦前は家業、受益者負担の授業料、そして分岐型学校制度と学校に通うハードルがあまりにも高いのでした。そこで学校基本法において、中学校の義務教育の無償化が決定されました。

単線型学校制度の導入(義務教育9年)+授業料・教材費無料が功を奏し、就学率はほぼ100%になりました。

第三の改革:46答申

第三の教育改革は、46答申です。これは、1970年(昭和45年)の中央教育審議会による「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」の答申で、学校教育全般にわたる包括的な改革整備の施策を提言しています。その結果、以下のような法律の施行や対策が行われました。

  • 義務標準法:小中学校の学級編制、教職員定数に関する最低限の条件を定めた
  • 高校標準法:高校整備に必要な財源を地方交付税で確保するとともに、高校の定時制・通信制教育を拡大。また職業教育の多様化を計った法律
  • 国立大学の計画的な入学定員の増員
  • 人材確保法:教員給与の改善や現職教員の再教育により、義務教育水準の向上を図った

教育の量的拡大と質的改善を目的とした対策や法律が多いことが分かります。またこの時に、のちに重要となる生涯教育の考えが広まり始めました。その点では、生涯教育の観点から学校教育を見直すことを指摘した答申であるとも言えるでしょう。

背景

46答申が提言された背景には、ベビーブーム世代の到来と急激な社会変化があります。1971年から1974年まで出生数が200万人を超える年もあり、教育の拡大が必要になったのです。また1973年から1991年までの安定成長期により、所得の向上が見られました。結果、ベビーブーム世代で、高等教育への進学希望者が増加し、1975年の進学率は91.9%と10年前に比べて約20%高くなっています。

さらに家電製品などの普及・技術革新も進み、女性の社会進出も可能にしました。このように生活水準が高まったことで、人々の価値観が変わり、ニーズも多様化していったのです。そのため、従来の教育では対応できない校内暴力や登校拒否、そしていじめなどの問題が明らかになりました。学校・教員の質を改善して、それらの問題に応えていこうとしたのです。

第四の改革:ゆとり教育

第四の改革はゆとり教育です。実はこの「ゆとりある学校生活」が言及されたのは1976年(昭和51年)なので、ゆとり教育の始まりは今から約45年前にも及びます。

1980年から2008年までのゆとり教育の期間は、学習指導要領の改定に合わせると3つに分けられます。

1980年度(昭和55年)のゆとり教育:自ら考え正しく判断できる力をもつ児童生徒の育成
・道徳教育や体育を一層重視
・カリキュラムの精査や授業時間の削減
1992年度(平成元年)のゆとり教育:社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成
・個性を生かす教育を充実させ、幼稚園教育や中学校教育と一貫性のある教育
・学ぶことの楽しさや成就感を体得させ 、自ら学ぶ意欲を育てるため体験的な学習や問題解決的な学習を重視
2002年度(平成14年)のゆとり教育:自ら学び自ら考える力などの生きる力を育む
・年間授業時数の縮減(年間70単位時間)
・完全学校週5日

ゆとり教育と一口に言っても、時代により差があることが分かります。「自ら」がどの年代でも重要視されているので、当時の子どもたちは学習に対して受け身で自分の考えを表現することが苦手だった、と言えるでしょう。

背景

ゆとり教育ができた原因として挙げられるのが、それまで実施されていた詰め込み型教育では、学習内容についていけない生徒が多かったためです。

当初のゆとり教育の基本的な方針として「個性重視の原則」、「生涯学習体系への移行」、「国際化、情報化などの変化への対応」などが上がっていました。

また第三の改革では対応しきれなかった不登校やいじめに加え、新たな問題である非行、落ちこぼれ、自殺などの社会的問題に対する対抗措置としての役割も期待されていました。

学力低下の危機?!

2004年(平成16年)に発表された、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果からあることが判明しました。諸外国の子どもと比較して学習意識・学校外での学習時間が低水準にあること、資料の読解力に課題があることが分かったのです。そのため、多くの保護者や大人たちから「ゆとり教育により子どもの学力が低下したのではないか」と心配・疑問の声が上がりました。

そして2006年(平成18年)に教育基本法の改正、2008年(平成20年)に新たな学習指導要領を告示しました。 その学習指導要領では、以下の3つの基本的な考え方を示しています。

  • 教育の理念を踏まえ、 「生きる力」を育成
  • 知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視、授業時数を増加
  • 道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成

上記の考えのもと、様々な改善が行われました。小中学校において、授業時数を実質10%程度増加、小学校高学年の「外国語活動」の時間を新設、総合的な学習の時間の削減、言語活動・理数教育・道徳教育の充実、保健体育における武道の必修化などです。このようにゆとり教育とは一転した改善が実施されたため、「脱ゆとり教育」とも言われています。

生きる力とは、「自分で課題を見つけ行動し、よりよく問題を解決する力」、「他人と協調し思いやる心のある豊かな人間性」「たくましく生きるための健康や体力」からなる力です。2010年に実施された学習指導要領の基本的な考え方は、2020年の教育改革でも受け継がれていきます。

知識を習得するだけでなくそれをどのように活かすかにまで言及されているので、「詰め込み教育」でも「ゆとり教育」でもない新しい教育が目指されました。

第五の改革:2020年教育改革

第五の教育改革となるのが2020年教育改革です。新学習指導領が、小学校では2020年度、中学校では2021年度、そして高校では2022年度から実施される予定になっています。

前回の学習指導要領の理念を引き継ぎ、思考力・判断力・表現力等の育成、そして知識の習得や理解の質を高めることを基本的な考えの1つです。

その考えのもと、以下の3つの資質・能力の身につけることを目的にしています。

  • 学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」
  • 生きて働く「知識・技能」
  • 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」

今までの教育は、知識や技能を確実に習得することを重視していました。しかしそれだけでは予測不可能な未来では、立ちいかなくなります。そのためこれからは知識や技能を、社会でどのように役立てるかを「自分で考え、表現し、判断する力」が必要です。その力を育成するために、新たな学習内容・学習方法が始まります。

具体的な取り組み

具体的には、以下のような現代に合った学習内容、評価方法が採用されるようになります。

  • アクティブ・ラーニング:受け身ではなく生徒自身が自ら考え行動するように設計された学習法
  • 大学入学共通テスト:センター試験の後継であり、2021年1月から実施。知識の理解や質、思考力や表現力などを重視した問題になる。
  • 英語の実践力重視読む・聞く・話す・書くの英語4技能が更に重視される。大学入試では民間試験も活用予定。
053-kaikakumatome
155-entranceexam-change

背景

2020年の教育改革が推し進められる背景として、大きな要因となっているのが「AIをはじめとする科学技術の発展」と「グローバル化」です。大きくはこの2点に働きかけるための改革となっております。

これまでの知識詰め込み型の教育から脱却し、「今まで身につけた知識をどう生かすのか」、「AIに負けない子どもをどのように育てていくのか」、ということに重きを置いた教育改革となっております。

ゆとり教育との違いは?

ここまで読み進めた方ならお気づきだとは思いますが、2020年の教育改革とゆとり教育とではその根本に「知識詰め込み型の教育からの脱却」という同じ姿勢があります。ですので、2020年教育改革もゆとり教育と同じように失敗に終わるのでは?という意見があるのも事実です。

しかし2020年教育改革とゆとり教育とで大きく違うものがあります。それは試験形態の変化です。2020年教育改革では、思考力・判断力・表現力に重きを置いた大学入学共通テストが始まり、AO推薦入試を用いた入試の多面的・総合的評価も導入されます。

つまり、ゆとり教育では授業や評価などの”過程”を変えたのに対し、2020年教育改革では入学試験や入試形態などの”結果”から変えたということになります。ここがゆとり教育との大きな違いとなります。

5回の教育改革のまとめ

いづれの教育改革も、先の未来に合う人材を育てるため・社会的問題を解決するために行われてきました。

第一の改革では、国を強くするために全ての国民が教育を受けられるように学制を設けました。また第三の改革は、当時問題であった、いじめや校内暴力・ベビーブーム世代による人口増加を様々な法律の施行や対策で解決しようとしました。

そして今回の教育改革2020でも何が起こるか分からない未来に対して、「知識を身につけ、社会でどのように活かすか」を重要視しています。

2020教育改革は失敗?

教育改革の歴史、そして今回の教育改革2020の解説を行いました。しかし今回の教育改革の目玉とも言える大学入試改革の2本柱、「英語民間試験」「国語・数学での記述式問題」の導入が早くも延期されてしまいました。またプログラミング教育やアクティブ・ラーニングも以下の課題があります。

  • 指導する教員が、アクティブラーニングの教育を受けたことがない
  • 準備期間や教員の不足

以上のことから、学校での「生きる力」「思考力・判断力・表現力」の育成が実現するまで、まだまだ時間が必要でしょう。では学校以外で生きる力を育むには、以下のような方法が挙げられます。

①探求学習やアクティブラーニングを取り入れている塾の指導を受ける
②家庭での会話の中で、お子様と活発な議論をするようにする

またスタスタでは、お子様の「生きる力」を育むオンラインコーチングサービスを行っています。上記の2つの方法を実現するのが難しいと感じた方は、ぜひチェックしてみてください。

まとめ

今回は、教育改革の歴史や背景を踏まえこれからの教育について触れていきました。

ここで紹介した内容が、日本の教育改革について疑問を持っている方の少しでもお役に立てれば幸いです。

何か不明点などありましたら、お気軽にご相談ください。

小学生必見

オンライン塾徹底比較

中学生必見

オンライン塾徹底比較

高校生必見

オンライン塾徹底比較

忘れないうちにシェア

  当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

2件のコメント