皆さんは「サドベリースクール」をご存知ですか?
サドベリースクールは「子供の自由な教育とデモクラシー」を理念に掲げたユニークな教育方法を採用する学校で、授業も学年も、テストもありません。
今回は、日本人がまだ知らない「サドベリースクール」についてご紹介します。
目次
サドベリースクールとは?
サドベリースクールとは、1968年アメリカのボストン郊外で始まった「サドベリー・バレー・スクール」の教育理念を元にした比較的新しい教育方法を採用する学校のことです。
あらかじめ決められたカリキュラムが一切なく、テストも授業もないという、斬新な教育スタイルを採用しています。サドベリースクールは、生徒が興味を持ったことを自由に学べる環境であることから、子供の好奇心を伸ばすのに効果的な教育方法と言われています。
サドベリースクールが、他の教育形式と比較して最もユニークな点は、学校運営に生徒も参加するということです。学校運営や人事について、生徒と学校職員が話し合いながら決定したり、保護者に関することは保護者も参加して話し合ったり、他の学校運営にはない生徒自身の自主性が重んじられています。
サドベリースクールでは学校運営に関する投票権が、生徒・学校職員・親の三者に1票ずつ平等に与えらています。このことから、サドベリースクールは、別名「デモクラティックスクール」とも呼ばれています。サドベリースクールは、子供自身が学校運営に携わるという、珍しいタイプのフリースクールなのです。
発祥は?
サドベリースクールは、どのように生まれたのでしょうか?まずは、その誕生の歴史を少し見てみましょう。
サドベリースクールの起源となった「サドベリー・バレー・スクール」は、1968年にアメリカ・ボストン郊外で誕生しました。スクールの創始者は、コロンビア大学物理学教授のダニエル・グリーンバーグ氏で、地域の住民と協力して学校運営が始まったといわれています。
創設当時から「子供の成長のため、個人の自由を尊重すること」そして「関係者全員が平等に運営に関わること」という2つの学校理念を掲げて、サドベリースクールがスタートしたのです。
教育方針は?
サドベリースクールの教育方針についてはどうでしょうか。サドベリースクールでは、学校で何をするのかを生徒自身が決めるという教育方針を取っています。そのため、授業もテストもないというのが、サドベリースクールの特徴です。生徒の個性と意思を尊重し、一切強制しないというのも特徴の一つです。
「こんなに自由な学校では、子供は何も学ばないのでは?」と不安になってしまいそうですが、サドベリースクールの生徒たちは、自ら興味を持てることを自主的に選択して学ぶため、高い自主性と自立心を持った人間へと成長していきます。
自分の選択に責任を持ち、問題が起こっても自力で解決しようとすることで、創意工夫する姿勢が育つのです。アメリカのサドベリースクールで育った子供たちは、卒業後に大学へ進学する場合もあれば、学生起業するなど、各方面で目覚ましい活躍をしています。
サドベリースクールの3つの特徴
続いて、サドベリースクールの3つの特徴を見ていきましょう。
子供の自主性を尊重するサドベリースクールでは、「学習環境」「授業スタイル」「学校運営方法」の3点に、大変ユニークな教育スタイルを取り入れています。
学年の関係ない教育環境
サドベリースクールを実施している学校では、学校内に学年がありません。4歳から19歳までの年齢の違う子供たちが、1つの空間で自由に学び合う教育環境となっています。
自由に学べる環境であるということは、決して野放しにするということではありません。年齢の違う子供たちが、一緒に過ごすことによって、互いを刺激しながら支え合い、それぞれが成長していきます。
加えて、違う年齢の人と生活を共にするので、コミュニケーションスキルが高まると言えます。
自由な授業スタイル
サドベリースクールでは授業スタイルも大変ユニークです。以下のタイムスケジュールは学校のルールで決まっているものです。空いている時間については、自分たちが学びたいことをそれぞれ積極的に行っています。朝夕のミーティングについては、自由参加となっています。
<サドベリースクールの一日の時間割>
- 10:00~11:00 登校
- 11:15 朝のミーティング
- 15:05~15:20 掃除
- 15:20 夕方のミーティング
- 16:00 下校
サドベリースクールには、テストも、授業も一切ありません。生徒は、まず自分が学びたいことを企画書にまとめ、学校スタッフとミーティングの席に提出して「プレゼンテーション」を行います。学校職員と他の生徒からの同意が得られると、その企画を学べるという仕組みです。
企画を実現するには、説得力も必要になりますし、興味のあることを実現するための企画や交渉の方法も学べます。また、自分の好きなことを追求して学べるので、得意なことや好奇心を伸ばせるという特徴があります。
例えば、数学が好きな中学生の場合、数学についての企画を立ち上げて予算を獲得し参考書や教材を買って、スタッフに教えてもらったり、一人で考えたりしている生徒もいます。
学校運営への参加
サドベリースクールでは、生徒・学校職員・保護者が一人一票の投票権を持って、学校運営に参加しています。たとえ4歳の子供であっても、大人と同様に1票の権利を持ち、学校運営を決定する話し合いに参加することになっています。
小さな頃から「自分の意見を述べる」チャンスを与えらますので、自分の考え方を相手に伝えるコミュニケーション能力や、自ら行動していく行動力が養われると考えられています。
それと同時に、学校運営に対する「責任感」も身につくでしょう。
サドベリースクールに通うメリット・デメリットは?
他の教育スタイルとまったく違ったユニークなメソッドとして知られる「サドベリースクール」。生徒の自主性を重んじ、幅広い年齢の子供たちが、自由に学べる理想的な学習環境も魅力です。
そんなサドベリースクールを受けるメリットとデメリットには、一体どんなことがあるのでしょうか?
メリットは?
まずは、サドベリースクールのメリットから見ていきましょう。
- コミュニケーションスキルが身につく
自分の学びたいことを自ら提案する場を与えられるため、他の生徒にもしっかりと意見を伝える機会に恵まれています。そのため、自分の意見をははきり伝えるコミュニケーションスキルが磨かれます。 - 好奇心が伸ばせる
興味・関心のあるテーマ自由に学べる環境であることから、好きなことに打ち込め、好奇心を伸ばしていくことが可能です。 - 自主・自立の精神が育つ
小さな頃から投票権を持ち、各自が責任を持って学校運営に関わることで、自主・自立の精神が培われます。
サドベリースクールのメリットを見ると分かりますが、複雑化する現代社会で必要とされる大変重要なスキルを身につけることができます。
デメリットは?
一方、サドベリースクールにはどんなデメリットがあるのでしょうか?
- 年功序列を意識できなくなる
サドベリースクールでは、子供と大人の権利が平等であることと、4歳から19歳までの異なる年齢の子供が一緒に学ぶ環境にあるため、年功序列という概念がありません。そのため、年齢に関係なく、誰とでも対等だという感覚で成長していくため、年上の人を敬うといった日本的な礼節は身につきづらい傾向があります。 - 他者と同じ平均的な生き方ができなくなる
個性を伸ばすことに重点を置いた教育方法ですので、逆に言うと、他者と同じ平均的な生き方をすることが難しいようです。 - 協調性がやや劣る
子供の興味があることを自由に学べるのがサドベリースクールの利点ではありますが、他の人とまったく違った行動をとっても良い環境であることから、やや協調性に欠ける部分があるようです。 - 法律上は学校には当たらない
サドベリースクールは法律上、学校に位置づけられていないので卒業資格を取得できません。ほとんどのご家庭では、公立の小中学校に籍を置いてサドベリースクールに通うことで、卒業資格を取得しているようです。高校となると籍だけ置くことは難しいので、通信制の学校や単位制の学校に通って、卒業資格を得ているようです。
サドベリースクール卒業生の進路・体験談
ここまでサドベリースクールの特徴について説明していきました。では実際にサドベリースクールを卒業した方は、どのような進路を進むのでしょうか?以下の表で一部の卒業生の進路を紹介していきます。
卒業生 | 体験談 |
Aさん | 現在、旅やアウトドアの情報発信を手がけています。当時は選択肢が用意されていないことによって、将来について悶々とする時期があったと言います。サドベリースクールに通って、自分と向き合うことができたそうです。 |
Bさん | 現在、ホテルで働いています。自由な環境で育ってきたため、良くも悪くも固定概念がないため、「年の割にしっかりと話をするね」と言われることもあるそうです。 |
Cさん | 6~11歳の期間をサドベリースクールで過ごしたため、学校で勉強した経験がなかったと言います。しかし17歳になって大学に行く決心をしたときに、2ヶ月で全ての勉強内容をマスターし、芸術大学に合格したといいます。 |
参考:Yahoo!ニュース『公教育を離れて過ごした日々 「オルタナティブスクール」とは』
サドベリースクール一覧
ここまで記事を読んで、「サドベリースクールに子どもを通わせてみたい」と感じてはいませんか?ここから全国のサドベリースクールを一覧にして紹介します。
実際に自宅付近にあるかどうかを確認してみてください。
サドベリー教育は家庭で取り入れられるか?
サドベリースクールは数か所しかないため、通学圏内の学校は見つかりませんよね。そこでサドベリー教育を家庭に取り入れられるか気になっている方もいるのではないでしょうか?
実際にサドベリー教育を家庭でやるのは少し難しいかも知れません。しかし教育方針を家庭や人間関係に取り入れることでサドベリー教育を持ち込むことはできます。
例えば、サドベリースクールには「ミーティングで話し合って決める」という方針があります。これを家庭に取り入れるとすると、夜ご飯は話し合って決める、旅行の行き先は皆で意見を出し合って決めるなどが実行できます。
このようにサドベリースクールの教育方針を取り入れるだけでも、子供の自主性が高まるなどの効果が見込めるでしょう。
家の近くに教室がなく、家庭で取り入れるのも大変そうだと感じた方は、ぜひスタスタのオンラインコーチングサービスをご利用ください。お子様の主体性を育む指導をしています。詳細は以下よりご確認ください。
主体性が身につく他の教育法
サドベリースクールを検索している中でオルタナティブ教育という文言を目にしたという方も多いのではないでしょうか?
オルタナティブ教育とは日本の公教育のように学校教育法で規定されていない教育法のことです。新しい教育理念や哲学から生まれている点がフリースクールとは違う点で、代表例としてイエナプラン教育やフレネ教育、モンテッソーリ教育などがあります。
それぞれの教育法の概要は下記の通りです。
- イエナプラン教育
20の原則を設け、その方針に従って活動していく教育法で「個性の尊重と対話」を重視しています。この教育法では生徒はグループを作り、教員がそのリーダーとして問題提示したり、まとめ役を行ったりしながら生徒が自発的に行動する環境を作ります。 - フレネ教育
子供たちが中心となって学習を進める教育方法です。年齢が違う子供に囲まれながら生徒が個々に作成した活動計画表に沿って学びます。自分の作った計画に沿って活動するため、意欲的に勉強を進めるようになり、自主性が育まれます。 - モンテッソーリ教育
最終的な目的として「自立していて、有能で責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てること」を掲げています。年齢や発達状況に応じた教具で感性を刺激し、社会性や協調性を育てます。
上記に挙げた以外にも様々な教育方法があります。詳細が気になる方は、以下の記事から確認してみてください。
まとめ
アメリカのボストンで誕生したユニークな教育メソッド「サドベリースクール」についてご紹介致しました。生徒の個性や自主性を重んじる自由な教育スタイルと、学校運営に子供自らが参加するというユニークな運営方針を持つサドベリースクール。
日本では、運営実績が15校ほどと少なく、「個性を生み出す教育」があまりにも突出していることから、なかなか学校数が増えない状況です。豊かなコミュニケーション能力と子供の好奇心を伸ばすサドベリースクールは、国際化社会で活躍する未来の子供たちを育てる斬新な教育スタイルと言えるかもしれません。
日本ではまだまだ馴染みがないけれど、人と違った教育、個性を伸ばす教育に興味のある方にとっては、サドベリースクールも選択肢の一つになり得るのではないでしょうか?
✔️サドベリースクールには、授業や時間割、テストをはじめ、学年やクラスがない。先生はおらず、学校の運営を生徒が行う。
✔️サドベリースクールは、幼稚園から高校(4歳から19歳)まで通える。
✔️「学校で何をするのか」までも生徒自身で決める。