現在、大学入試改革を2021年に控え、様々な混乱があります。大学によって新しく導入される大学入学共通テストや英語民間試験を採用するのかは異なっているのです。
そこで今回は、日本大学・東洋大学・駒澤大学・専修大学(以下:日東駒専)と成城大学・成蹊大学・明治学院大学・獨協大学・國學院大学・武蔵大学(以下:成成明学獨國武)の2021年度入試をまとめて解説します。
文部科学省より、11月1日付より2020年度からの英語民間試験の活用の延期、12月17日付けで文部科学省より、2020年度の記述式の導入を見送るとの表明がありました。
本記事は12月18日現在の情報を元に作成しておりますが、今後も入試内容は変更される恐れがあります。
目次
そもそも2021年度の入試改革って?
日東駒専・成成明学獨國武の入試方法の変化を理解するために、2021年度には国全体でどのような入試改革が行われるのか知る必要があります。そのため入試改革で大きく異なる点である「大学入学共通テスト」について以下で確認してみましょう。
大学入学共通テスト
2020年1月の実施が最後となる大学入試センター試験。その後を引き継ぐのが「大学入学共通テスト」です。
これまでは学んだことを理解し知識として蓄える力が重視されてきました。一方で、2021年から実施される大学入試改革では以下の3要素に重きを置いた内容となります。
- 知識・技能
- 思考力・判断力・表現力
- 多様な人々と主体的に協働して学ぶ態度
この3要素を前提に、試験に反映される具体的な内容が以下の記述式問題と英語民間試験の導入です。
数学と国語の試験として一部に記述式問題を導入・英語ではリスニングの配点が増加
センター試験で行われていた筆記試験と、2021年度大学入学共通テストでの筆記試験での大きな違いは以下の2点です。
- 国語と数学Ⅰに記述式の問題が出題される。(センター試験ではマーク式問題のみ。)
→12月17日に記述式導入の見送りが発表されました。 - 英語の配点はリーディング100点・リスニング100点に変更。(センター試験では、リーディング200点・リスニング50点の配点でした。)
その他の変更点や、共通テストの実施の背景や目的について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
日東駒専の対応
日本大学
✔ほとんどの学部で大きな変化はなし
✔文理学部の指定公推薦に英語民間試験が求められる
以下で上記のポイントについてそれぞれ解説していきます。
大学入学共通テスト利用入試
日本大学はセンター利用入試であったC方式・CA方式を、名称を少し変えて大学入学共通テスとして利用します。そのため、ほとんどの学部で大きな変更点はありません。以下が大学入学共通テストの取扱いについてのポイントです。
- 国語の記述式問題は利用しない
- 英語民間試験の利用はほとんどの学部でない。
日東駒専の大学郡の中では、日本大学のみが国語の記述式問題を評価対象にしない方針です。そのため記述式の問題にどうしても不安のある生徒は、大学入学共通テスト利用入試では日本大学の受験をするのが良いでしょう。
ほとんどの学部で大きな変化はなし
独自試験を受ける一般選抜では、ほとんど学部で変更はありません。ただし生産工学部や工学部では、英語民間試験の利用が求められるのでご注意ください。
指定推薦(2021年度から「学校推薦型選抜 指定校制)に英語民間試験が求められる
指定校推薦で特に注意しなければならないのは文理学部です。およそ文理学部の学科のうち半分ほどが英語民間試験のCEFRでA2以上を取得しなければなりません。指定校推薦に学校の成績に加えて英語4技能のスキルまで求められるようになるため、指定校の枠を取るのが難しくなることが予想されます。
また理工学部のほとんどの学科でも英語民間試験の利用が必要になります。日本大学はこの評価基準について「下限を設けていない」としているため、明確にCEFRのレベルが求められているわけではありません。
参照:日本大学『2021年度以降の日本大学入学者選抜について』
参照:日本大学『2021年度入学者選抜における大学入学共通テスト及び大学入試英語成績提供システムの利用予定』
東洋大学
✔一般選抜の英語民間試験利用型入試は、2020年度のまま
それでは上記のポイントについて、以下で確認してみましょう。
センター利用入試は、そのまま大学入学共通テスト利用入試
現行のセンター試験利用入試が、そのまま大学入学共通テストに代わります。ただし大学入学共通テストでの変更点の影響を受ける点には注意が必要です。
- 国語・数学Ⅰの記述式問題が評価対象になる。
- 英語民間試験の利用はない。
一般選抜の英語民間試験利用型は、2020年度のまま
一般入試の中にあった英語民間試験利用型の方式は、2020年から変えないことを公表しています。そのためCEFRの利用もありません。
参照:東洋大学『2021年度 東洋大学入学者選抜について(2019年10月追加事項)』
駒沢大学
✔独自試験では記述問題の出題を充実
✔一般選抜の全学部統一日程で利用できる英語民間試験の種類は減少
大学入学共通テスト利用選抜
この選抜方式では従来までのセンター試験利用入試と同様、共通テストの結果のみで合否が決定します。共通テストの国語・数学の記述問題も、それぞれ点数化されます。
大学独自の試験では記述問題の出題の充実が図られる
学習指導要領の改訂に合わせて、駒沢大学は「知識・技能」の分野に加えて「思考力・表現力・判断力」についても選抜の評価に加えました。それらの能力をはかるうえで記述式の問題が出題されることになります。そのため、これまでの「マーク問題だけできれば合格できる」という試験ではなくなることが予想されます。
全学部統一日程で利用できる英語民間試験の種類は減少
全学部統一日程で利用できる英語民間試験は、下記のように変更されます。
2020年度まで | 2021年度 |
実用英語技能検定試験(4技能) TOEFL iBT® TOEIC® L&R TOEIC® L&R 及び TOEIC® S&W IELTS™(アカデミック・モジュール) TEAP(2技能) TEAP(4技能) GTEC(Advanced) (3技能) GTEC (CBTまたはAdvanced) (4技能) |
実用英語技能検定(4技能) TEAP(4技能) TEAP CBT GTEC |
TOEICやTOEFL、IELTSを利用して受けられなくなる点には注意が必要です。また評価基準に大きな変更点はなく、2021年度でも基底スコアを取得すれば、英語の独自試験を受ける必要がなくなり75点に換算されます。ただ2020年度までは各英語民間試験それぞれに基準が設けられていましたが、2021年度からはCEFRのB1以上が共通の指標となる点には注意しなければなりません。
専修大学
2019年11月現在では、詳細は公表されていません。以下が現在時点での入試改革のポイントです。
- 大学入学共通テストを利用した選抜の実施は決定しています。
- 英語民間試験も利用する方向性です。
参照:専修大学『2021(平成33)年度 専修大学入学者選抜について(予告)』
成成明学獨國武の対応
成城大学
✔独自試験の一般選抜においては、特に変更点なし
従来のセンター試験利用入試では、大学入学共通テストを利用
国語・数学Ⅰの記述式問題については、それぞれ合否判断に用いられます。また英語民間試験の活用は当面の間しない予定です。
独自試験の一般選抜においては、特に変更点なし
A方式(学部別入試)とS方式(全学部統一入試)ともに従来のままです。
参照:成城大学『2021年度成城大学入学者選抜の変更点について(予告)』
成蹊大学
✔独自試験を用いた一般選抜は特に変更なし
上記のポイントについて下記で解説します。
大学入学共通テストを利用した選抜方式
国語・数学Ⅰともにマーク式問題に加え、記述問題も評価の対象となります。2019年11月1日文部科学省による大学入試英語成績提供システムの導入見送りを受けて、現在も成蹊大学学部では対応を検討しています。
独自試験を用いた一般選抜は特に変更なし
一般選抜での教科・科目に変更はありません。2020年度に新設される経済学部・経営学部・グローバル教育プログラムについても、2020年度のままで入試が行われます。ただし経営学部のA方式については、一部の科目で大学入学共通テストの利用が予定されています。
明治学院大学
✔独自試験を用いた一般選抜については現行の出題方式を維持
大学入学共通テスト利用入試を実施
センター試験利用入試のように、大学入学共通テストで合否が決定する選抜方式が実施されます。
独自試験を用いた一般選抜については現行の出題方式を維持
「知識・技能」に加え、教育改革以降求められる「思考力・判断力・表現力」はこれまで重視してきたとし、2021年度も一般選抜の試験問題は変更しません。「英語外部検定試験利用型」は継続して実施されますが、大学入学共通 テストは併用しない方針です。
参照:明治学院大学『2021年度 明治学院大学入試選抜について』
獨協大学
✔一般選抜では高校時代の成果の提出が必要に!英語民間試験は英語4技能のみを利用
大学入学共通テスト利用選抜では、記述問題も評価対象に
大学入学共通テストを利用した選抜方式では、国語・数学Ⅰともに記述問題が評価対象になります。
一般選抜:高校時代の成果の提出が必要・英語民間試験は英語4技能のみ
新学習指導要領で「学びに向かう力」が重視されるため、獨協大学はこの取組みに対応する仕組みを設けます。出願時には主体生を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を持って取り組んだ活動の成果や留学経験、資格などについての情報提出が必要になります。ただし、これは得点化されず、入学後のキャリアデザインに活用される予定です。
また英語民間試験の利用については、従来通り「出願資格」「出願資格基準」として求められる予定です。ただし2021年度から語4技能以外の民間試験は対象ではなくなるため注意が必要です。一部の試験方式で、英語民間試験が出願資格基準になる法学部を志望する方は特に確認するようにしてください。
参照:獨協大学『2021(令和3)年度獨協大学入学選抜の変更点について(予告)
國學院大學
✔一般選抜の後期では、英語民間試験の成績を得点換算
大学入学共通テスト利用入学者選抜、一般選抜の前期
大学入学共通テスト利用入学者選抜、一般選抜の前期では外部英語試験は利用しない、としています。大学入学共通テスト利用入学者選抜での記述式問題については、数学のみの利用です。
一般選抜の後期では、英語民間試験をの成績を得点換算
後期の一般選抜では試験に英語を課す学部・学科において、英語民間試験の成績が得点換算されて利用されます。CEFRでA2以上からが得点換算の対象となりそうです。
一方で前期の一般選抜については、従来通りの方法で試験が行われます。
参照:國學院大學『令和3年度(2021年度)入学者選抜について(予告)』
武蔵大学
✔一般選抜では、英語民間試験のスコア提出が必須もしくはスコアが加点対象に!
大学入学共通テスト方式の選抜では、記述問題が評価対象になる
大学入学共通テストでは国語・数学の記述式問題も評価の対象になることが発表されています。また従来のセンター方式と比較すると前期日程において変更点があります。これまではセンター試験の2科目で前期日程の出願を行えましたが、共通テスト実施後は3科目のみです。
一般選抜では英語民間試験の利用が拡充
一般選抜の「全学部統一2科目型」と「個別学部併願3科目型」では、英語民間試験のスコア提出が出願資格となります。ただしこれは英語4技能の習得を目指す能動的な学習を求めるためとしており、合否判定には一切影響を与えません。
また「全学部統一グローバル2科目型」では、英語民間試験の成績が得点換算され、それが英語の点数となります。この選抜方式は上の2方式とは異なりスコアが合否に影響を与えるため、英語4技能対策は必須と言えます。
入試改革に対応するためには?
入試改革に対応するために、最低限しておかなければならないのは「大学共通テストの記述問題対策」と言えます。今回ご紹介した日東駒専・生生明学獨國武の10大学中、日本大学を除いた9大学が国語の記述問題も評価対象に含んでいます。
一方で独自試験の一般選抜においては、従来から試験方法を変更しないことが予想される大学は少なくありません。そのため独自試験だけに絞ってしまえば、入試改革の影響をほとんど受けずに大学受験が済む可能性もあります。
急な方向転換でかじ取りを不安に感じる方は、独自試験の一般選抜に的を絞り、入試改革対応への負担を減らすのも一つの選択肢となるでしょう。
まとめ
変化が激しい現代においては、社会に出てから必要とされる力もこれまでとは変わってきています。大学入試改革の対策を行うことは、よく考え、周りの人間と協働しつつ自主的に行動する力を養うための第1歩としても有意義なものとなるでしょう。
大学毎の入試改革の情報について探していた方のお役に立ちましたら幸いです。
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✔日大:「センター利用」→「共通テスト利用」に変更。
✔駒澤:「センター利用」→「共通テスト利用」に変更。独自試験は記述問題が充実。
✔専修:詳細は公表されていない。
✔東洋・成城・成蹊・明治学院・獨協・武蔵:「センター利用」→「共通テスト利用」に変更。独自試験に変化なし。
✔國學院:共通テスト利用入学者選抜での記述式問題は、数学のみ利用