国際バカロレア修了資格(ディプロマ)を取得することで、海外の名門大学への進学がしやすくなったり、日本国内でも有名大学での入学試験に適用されたりと、これから大学進学を目指す方にとっては何かと気になる存在ではないでしょうか。
何より、国際バカロレアを学ぶことで、グローバルな視野で世界を舞台に活躍できる人材へと育つのであれば、そんな教育を受けさせたいと思う保護者の方も多いでしょう。
国際バカロレアプログラムは幼少期からの育成においても価値がありますが、もっとも肝心となってくるのが高校生の年齢で実施される「DPプログラム」です。これを受けなければディプロマを取得することはできません。
そこで今回は、高校生を対象にした国際バカロレアやその認定校について、ご紹介していきます。
目次
国際バカロレアとは?
まずは、国際バカロレアについて
国際バカロレア(International Baccalaureate : IB)とは、本部をスイス・ジュネーブに置く国際バカロレア機構が提供している国際的な教育プログラムのことです。
多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い平和な世界を築くために貢献できる「理想の学習者像」の若者の育成を目的としています。
日本では2015年より、IBと学習指導要領の両方を無理なく履修できるようにする特別措置を施行したり、日本語で履修できる教科(日本語DP)を大幅に増やしました。これにより日本国内でも私立・公立ともにIB認定校が増え、帰国子女などだけでなく国内で学ぶ生徒の誰しもがIBを中学、高校から学習しやすくなりました。
またIBプログラムの修了資格(ディプロマ)を取得することで、海外大学への進学はもちろん、東大や京大、阪大、慶応など、国内の有名国公立・私立大学でも「国際バカロレア入試」等として入学試験に適用するところも増えてきました。
IBの学習者像
IB教育プログラムが育成を目指す人物像として、以下の10を掲げています。これを「IBの学習者像」といいます。IBではこんな人材を育成することを目的に教育プログラム、共通カリキュラムの研究・開発を行っているのです。
- 探究する人
- 知識のある人
- 考える人
- コミュニケーションができる人
- 信念をもつ人
- 心を開く人
- 思いやりのある人
- 挑戦する人
- バランスのとれた人
- 振り返りができる人
IBプログラムについて
IBでは3歳~19歳に向けて、年齢に応じた総合的な教育プログラムを提供しています。以下の4つに分かれていて、それぞれのプログラムごとに認定されます。
- PYP(Primary Years Programme):初等教育プログラム/3~12歳:精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム。どのような言語でも提供可能。
- MYP(Middle Years Programme):中等教育プログラム/11~16歳:青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。どのような言語でも提供可能。
- DP(Diploma Programme):ディプロマプログラム/16~19歳:所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。
- IBCP(Career-related Programme):キャリア関連プログラム/16~19歳:生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視したキャリア教育・職業教育に関連したプログラム。一部科目は、英語、フランス語又はスペイン語で実施。
(参考:文部科学省IB教育推進コンソーシアム)
高校における国際バカロレア
日本の高校で実施されるプログラムが「DP」です。高校2~3年の2年間を対象とした教程で、これを修了した生徒が世界統一の卒業試験を受け、一定の成績を取ることで、IB機構から国際バカロレア修了資格(ディプロマ)が与えられます。
これが国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)となります。国際バカロレア資格は、ハーバード大学やオックスフォード大学など、世界有数の大学でも高く評価されていて、入試や入学後の履修に有利となります。
日本では国際バカロレア資格を取得した18歳の生徒は、大学入試の受験資格(大検)が認められています。
DPカリキュラムは以下の6つの教科グループから1つずつ教科を選択し、さらにコアと呼ばれる3つの必修要件から構成されています。これらをすべて履修し、最終試験で45点満点中、原則として24点以上取得すれば国際バカロレア修了資格を得ることができます。
6つの教科グループ
- 言語と文学(母国語) /言語A:文学、言語A:言語と文学、文学と演劇
- 言語習得(外国語) /言語B、初級語学
- 個人と社会 /ビジネス、経済、地理、グローバル政治、歴史、心理学、環境システム社会、哲学など
- 理科 /生物、化学、物理、デザインテクノロジー、コンピュータ科学など
- 数学 /数学スタディーズ、数学SL、数学HL、数学FHL
- 芸術 /音楽、美術、ダンス、フィルム、文学と演劇
3つのコア
- EE(Extended Essay) /課題論文:履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、論文にまとめる
- TOK(Theory of Knowledge) /知識の理論:「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する
- CAS(Creativity Action, &Service) /創造性・活動・奉仕:創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む
日本語DPとは
DPの授業や試験は、すべての対象科目が英語、フランス語またはスペイン語で実施されています。
しかし現在、文部科学省と国際バカロレア機構が協力し、DPの一部の科目を日本語でも実施可能とするプログラムを行っています。それが「日本語DP」です。
日本語DP対象科目は以下の通りです。
- 「個人と社会」のうち、「経済」・「地理」・「歴史」
- 「理科」のうち、「生物」・「化学」・「物理」
- 「数学」のうち、「数学スタディーズ」・「数学SL」・「数学HL」
- 「芸術」のうち、「音楽」・「美術」
- 「コア」の3つの必修すべて(EE、TOK、CAS)
これら日本語DPでの履修、受験は「日本語DP認定校」でのみ受けることができます。それ以外の認定校では日本国内の学校であっても英語、フランス語またはスペイン語で履修、受験しなければなりません。
DP認定校一覧
日本の国内における「DPプログラムを実施している国際バカロレア認定校」の一覧です。(2019年7月24日時点)
まだまだ日本国内でのDP認定校は少ないので、通える地域にないかも知れませんが、もしお近くにある方は見学などに行ってみると良いでしょう。
*…一条校=日本の学校教育法第一条に規定されている学校という意味。つまりは、日本の学習指導要領が定める教育課程とIBが定める教育課程の双方を満たしている学校となります。
◎…日本語DP認定校
北海道・東北地方
北海道・東北地方では、まだ2校だけです。
開成中学、仙台育英といずれも名門の一条校が日本語DP認定校となっているので、高度な教育を受けられることは間違いなさそうです。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
北海道 | 市立札幌開成中等教育学校(*) | 〇 | ◎ | |
宮城県 | 仙台育英学園高等学校(*) | 〇 | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
関東地方(東京以外)
東京近郊以外では、まだまだ認定校が少ないのが現状です。
茗渓学園中学校高等学校は私立の中高一貫校で、国際教育に力を入れています。
筑波大学付属坂戸高等学校と神奈川県立横浜国際高等学校は国公立なので、学費の面では負担が少なく通える数少ないディプロマ認定校で人気が高まっています。
インターナショナルスクールでは、幼少期から一貫してIBプログラムを受けることができるところが多いのが特徴です。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
茨城県 | つくばインターナショナル | 〇 | 〇 | 〇 |
茨城県 | 茗渓学園中学校高等学校(*) | ◎ | ||
群馬県 | ぐんま国際アカデミー(*) | 〇 | ||
埼玉県 | 筑波大学付属坂戸高等学校(*) | ◎ | ||
神奈川県 | 神奈川県立横浜国際高等学校(*) | ◎ | ||
神奈川県 | サンモール・インターナショナルスクール | 〇 | ||
神奈川県 | ホライゾン・ジャパン・インターナショナルスクール | 〇 | ||
神奈川県 | 横浜インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | 〇 |
神奈川県 | 法政大学国際高等学校(*) | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
東京都
やはり東京都内ではインターナショナルスクールを中心に認定校が多くなっています。
玉川学園中学部・高等部は私立校で、幼稚部から高校までの一貫教育を展開していて、MYPとDPでIB認定校となっています。
またインターナショナルスクールでは学費が高くなる傾向が強い中、東京都立国際高等学校は公立のため、学費負担がネックとなっていた人にとって、都内で通える魅力的なDP認定校として注目されています。ただし日本語DP認定校ではありません。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
東京都 | アオバジャパン・インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | 〇 |
東京都 | インディア・インターナショナルスクール・イン・ジャパン | 〇 | ||
東京都 | 開智日本橋学園中学・高等学校(*) | 〇 | ◎ | |
東京都 | ケイ・インターナショナルスクール東京 | 〇 | 〇 | 〇 |
東京都 | 清泉インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | |
東京都 | セント・メリーズ・インターナショナルスクール | 〇 | ||
東京都 | 玉川学園中学部・高等部(*) | 〇 | 〇 | |
東京都 | 東京都立国際高等学校(*) | 〇 | ||
東京都 | 武蔵野大学付属千代田高等学院(*) | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
中部地方
中部地方でもまだまだ多いとは言えませんが、名古屋には3校が集まってあります。
山梨学院中学高等学校、加藤学園暁秀中学校・高等学校、名古屋国際中学校・高等学校は私立の中高一貫校です。
山梨県立甲府西高等学校は公立の日本語DP認定校で、学費面で人気が高まっています。
東海学園高校は私立の高等学校で東海学園大学名古屋キャンパスと同じ敷地内にあります。
いずれも一条校です。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
山梨県 | 山梨学院中学高等学校(*) | ◎ | ||
山梨県 | 山梨県立甲府西高等学校(*) | ◎ | ||
長野県 | インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢 | 〇 | ||
長野県 | 松本国際高等学校(*) | ◎ | ||
静岡県 | 加藤学園暁秀中学校・高等学校(*) | 〇 | 〇 | |
愛知県 | 名古屋インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | 〇 |
愛知県 | 名古屋国際中学校・高等学校(*) | 〇 | ||
愛知県 | 東海学園高校(*) | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
関西地方
関西も大都市が多い割には認定校はまだ少ないのが現状です。
有名私立大学の付属中学・高等学校が多い印象ですね。それ以外はおおむねインターナショナルスクールとなっています。
滋賀県立虎姫高等学校は公立の日本語DP認定校で行きやすいIB認定校として人気が高まっています。
AIE国際高等学校は淡路島にある私立の単位制・通信制高等学校(一条校)です。通信制高校としては唯一のIBDP認定校となっています。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
滋賀県 | 滋賀県立虎姫高等学校(*) | ◎ | ||
京都府 | 同支社インターナショナルスクール国際部 | 〇 | 〇 | |
京都府 | 立命館宇治中学校・高等学校(*) | 〇 | ||
大阪府 | 関西学院大阪インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | 〇 |
大阪府 | コリア国際学園 | ◎ | ||
大阪府 | 大阪女学院高等学校(*) | ◎ | ||
兵庫県 | カナディアン・アカデミー | 〇 | 〇 | 〇 |
兵庫県 | マリスト国際学校 | 〇 | ||
兵庫県 | AIE国際高等学校(*) | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
中国・九州地方・沖縄
中国・九州地方はまだ1都道府県に1つも認定校がないところも多い地域です。国公立のIB認定校はひとつもありません。
岡山理科大学付属高等学校は私立の中高一貫校です。数少ない理系専門のIB認定校です。
英数学館高等学校は、小学校・中学校・高等学校と一貫した教育を行っている私立学校です。経営母体は岡山理科大学付属高等学校と同じ加計学園グループです。
AICJ中学・高等学校は私立の中高一貫校(一条校)で、世界の名門大学進学に力を入れたIBDP認定校です。
福岡第一高等学校、沖縄尚学高等学校はどちらも私立高校です。
都道府県 | 名称 | PYP | MYP | DP |
岡山県 | 岡山理科大学付属高等学校(*) | ◎ | ||
広島県 | 英数学館高等学校(*) | ◎ | ||
広島県 | AICJ中学・高等学校(*) | 〇 | ||
広島県 | 広島インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | 〇 |
福岡県 | 福岡インターナショナルスクール | 〇 | 〇 | |
福岡県 | リンデンホールスクール中高学部(*) | 〇 | ||
福岡県 | 福岡第一高等学校(*) | ◎ | ||
沖縄県 | 沖縄尚学高等学校・付属中学校(*) | ◎ |
*…一条校 ◎…日本語DP認定校
まとめ
いかがだったでしょうか。お近くにIBのDP認定校はあったでしょうか。
文部科学省では、2020年までに認定校200校を目指すとしていますが、実際はまだまだ程遠い数しかありません。中でも日本語DP認定校となると、全国に21校しかない状況です。高校から急に全授業が英語で実施されるインターナショナルスクールに転校するには、ハードルが高すぎると考える方も多いでしょう。
現在、候補校として認定されているところも数十校あるので、いずれもっと増えていくでしょう。(候補校から認定校になるまでは2~3年かかるようです)今後の教育改革の波で、国際バカロレアも日本国内に徐々に浸透していくものと思われます。
しかし、国際バカロレアのデメリットのひとつが学費が高いことです。通学にも時間・費用がかかり、学費も高いとなると、家庭への負担は大きくなります。
IBディプロマの取得により、海外大学への進学はぐっと身近なものになることは間違いありません。そうした目標を具体的に持っている方にとっては、多少の負担がかかってもIBDP認定校を目指すと、大学進学後にもディプロマのスコアや学習した内容そのものが大きな力になるので、おすすめです。
国際バカロレア認定の高校ってどうなの?という疑問をお持ちだった方のお役に立てたら幸いです。 なにか気になることがあればコンシェルジュにご相談ください。
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