イマージョン教育とは?効果・メリット・問題点を徹底解説!

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スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
キーポイント

✔イマージョン教育とは、英語を手段として使いながら語学力を伸ばす教育法

✔小学校低学年から受ければ、高学年で「読む・聞く」力はネイティブレベルに!認知力の向上にも効果あり

✔中途半端だとかえって、お子様の成長を阻害する可能性も

グローバル化が進み英語の重要性が高まる近年、お子様に英語力をつけさせたいと考えているのではないでしょうか。しかし英語の学習方法はたくさんあって、どれにすればいいのか良くわかりませんよね。

そこで今回は、一部の学校で導入されている英語教育法「イマージョン教育」について、概要やメリット、デメリットなどについてご紹介していきます。

イマージョン教育とは

イマージョン教育とは、英語を「目的」としてではなく「手段」として学ぶ教育プログラムです。具体的には英語を科目として教えるのではなく、英語を算数や理科など別の教科の中で使い、その結果として語学力を習得させます。

イマージョンの動詞形であるimmerseが意味するのは、「浸す」や「漬ける」です。英語で授業を行うイマージョン教育は、生徒を文字通り「英語漬け」にしていると言えるでしょう。

またイマージョン教育の目標は単に英語力を身に付けることだけではありません。以下4つの目標が挙げられます。

  1. ネイティブレベルでの英語コミュニケーション能力の育成
  2. 日本語力の維持・向上
  3. 学齢にふさわしい教科の知識
  4. 異なる言語と文化への理解。また母文化への誇り

そしてイマージョン教育は、バイリンガル教育の一種です。そのため上記の目標で示されているように、決して母語・母文化をなおざりしてしまうものではありません。

※イマージョン教育が対象とする言語は、第二言語であり英語に限りません。しかし本記事では便宜上、英語として紹介しています。

イマージョン教育を支える理論

カミンズの提唱する「二言語相互依存説」が、海外の言語政策に影響を与えています。

二言語相互依存説を簡単に説明すると、文や音声の構造が異なる言語でも根っこの部分は同じで、2つの言語は互いに影響し合いながら発達していくという考えです。そのため語学力の転移が発生します。例えば日本語で培った読み書き能力は、英語の読み書き能力の習得を助けるのです。

イマージョン教育の種類

イマージョン教育は「導入時期」と「英語の使用割合」で、プログラムが分けられます。以下でそれぞれ確認してみましょう。

導入時期

イマージョン教育を開始する時期によって、以下の3種類に分けられます。

種類 開始時期 高校卒業までの指導時間
早期イマージョン 幼稚園もしくは小学1年生 6740~7480時間
中期イマージョン 小学4年生もしくは小学5年生 3000時間
後期イマージョン 中学1年生 2520~2820時間

※田中佑美『イマージョン教育と第二言語習得-日本の英語教育への応用』を基に作成
※指導時間はカナダの事例を参考としているため、日本での指導時間と差異がある場合があります。

英語の使用割合

英語の使用割合では、以下2つの種類に分けられます。

  • 完全イマージョン
    プログラムの最初は授業すべてを英語で行い、徐々に日本語での授業割合を増やしていくプログラムです。
  • 部分イマージョン
    日本語と英語の授業の割合を50%ずつにするプログラムです。ここで注意が必要な点は、教科ごとに言語を分けている点です。例えば算数は全て英語、社会は日本語で授業が行われます。1教科の中で、40分のうち20分が英語というわけではありません。また英語で行われる教科には、算数や体育など直観的に学習内容を理解できる教科が選ばれる傾向にあります。

その他のイマージョン教育

また上記に分類できないプログラムもあります。

  • 双方イマージョン
    ある言語を「母語とする生徒」と「第二言語とする生徒」を、クラスで半分ずつにするプログラムです。例えば日本人とアメリカ人が約50%ずつ在籍するクラスで、日本語の授業を行うことです。この場合には英語での授業も行われるため、その点で双方向性があると言えます。
  • 二重イマージョン
    母語は用いず、第二言語と第三言語で授業を行うプログラムです。例えば日本人には、教科別に英語と中国語の授業が展開されます。

イマージョン教育の歴史

イマージョン教育は1960年代に、カナダのケベック州で始まりました。背景にあるのは、ケベック州のみカナダと公用語が異なっていたことです。カナダは英語とフランス語の二言語を公用語とする一方で、ケベック州はフランス語だけを公用語としていました。そこでイギリス系カナダ人の保護者が抱いた「自分の子どもたちに実生活で使えるフランス語を身につけてほしい」という願いから、イマージョン教育は生まれました。現在ではカナダの全ての州で導入されています。

またアメリカでも1968年のバイリンガル教育法が制定されてから、アメリカ全土に広がりました。現在では、約200の学校がイマージョン教育を実施しています。

日本では1992年から、静岡県にある加藤学園が実施を始めました。現在、日本国内で10以上の学校が導入しています。

イマージョン教育の効果・メリット

聞く力・読む力はネイティブレベルまで上達

早期イマージョンを受けた生徒は小学校高学年の時期に「聞く」「読む」の力がネイティブレベルになると言われています。この理由は、この時期までにおよそ5000時間も英語に触れるからです。

仮に小学から高校まで外国語として英語教育を受けた場合、高校卒業までの英語授業時間は960時間ほどになります。小学生の段階で高校を卒業した生徒の5倍以上も、英語の授業を受けたことになるのです。

認知力が向上する

2つの言語を習得することで、認知力が育つと考えられています。

この根拠となっているのが、カミンズが提唱する「しきい理論」です。しきい理論では以下のように、2言語の習熟度を3段階に分け、それぞれの間に「しきい」があると想定しています。そして2つの「しきい」を超えたときに、認知力が向上するという考えです。

  • 2言語とも年齢相当の語学力
  • 片方のみが年齢相当の語学力
  • 両言語とも低い語学力

つまり2言語で一定以上の語学力を獲得できれば、高い認知力を身につけられるのです。

実際にカナダで、この効果を確かめる調査がありました。国際的な学力到達度調査であるPISAの読解力テストにおいて、一つの州を除く全州でイマージョン教育を受けていた生徒の方が、受けていない生徒よりも高い得点を獲得しました。

イマージョン教育の問題点・デメリット

中途半端だと逆効果

「2言語とも低い語学力」しか持たない場合、認知力の発達にマイナスの影響があります。メリットの箇所で紹介した「しきい理論」で、その可能性が示されています。

お子様の将来のために受けさせたイマージョン教育のはずが、かえって成長を阻害してしまう危険もはらんでいる点を必ず留意しなければなりません。そうしないためにも、保護者の方のサポートが非常に大切になります。

学費が高い

2020年現在でイマージョン教育を実施しているのは、私立の学校のみです。そのため公立高校の学費では受けられません。

またイマージョン教育には、追加的な費用がかかります。普通のクラスとイマージョン教育の2クラスを設置する加藤学園暁秀小学校では、イマージョン教育のクラスは月額3万円が上乗せされます。

ただし英語で授業をするためにネイティブ教師を雇ったり、英語の教材を用意したりするため、追加的な費用が生じるのは仕方のないことだと言えるでしょう。

ここってどうなの?イマージョン教育への不安

子どもは英語未経験でも大丈夫なの?

基本的には英語未経験でも問題ありません。各学校でフォロー体制が整えてあります。以下でその例を確認してみましょう。

  • LCA国際小学校
    「エンリッチメントタイム」を時間割の中に設けています。英語のことなど生徒が理解できなかった内容を、個別指導でサポートする時間です。
  • ホライゾン学園 仙台校
    少人数制での英語授業を実施しています。また1、2年生に対しては、放課後を利用した補講も実施されているのが特徴です。

保護者は家でどんなサポートをしてあげればいい?

保護者の方は、お子様とたくさん話してあげることが大切です。「二言語相互依存説」や「しきい理論」で裏付けられているように、イマージョン教育では母国語の習得も怠ってはなりません。特に小学校低学年時は家で過ごす時間が長いため、子どもは保護者との会話から語彙を獲得します。自分たちも英語を教えなきゃと焦らずに、自宅では母国語の教育に力を入れるのがよいでしょう。

イマージョン教育を受けられる小学校

それでは以下で、実際にイマージョン教育を受けられる小学校を確認してみましょう。日本でイマージョン教育を受けられるのは以下の13校です。(2020年2月スタスタ調べ)

イマージョン教育以外の英語学習方法

英語を身につけさせる方法は、イマージョン教育以外にもたくさんありますよね。以下で「インターナショナルスクール」「英会話教室・英語塾」をイマージョン教育と比較していきます。

インターナショナルスクール

インターナショナルスクールへの通学をオススメしたいのは、「英語だけ育てられればよい」と考える方です。その理由として以下の2点が挙げられます。

  • 日本での卒業資格を得られない
  • あくまでネイティブのための学校

それぞれについて詳しく確認していきましょう。

日本での卒業資格を得られない

インターナショナルスクールは基本的に日本の法律で認められた学校ではないため、卒業資格を得られません。そのため国内の学校に進学・編入する場合には制限があります。一方でイマージョン教育の実施校は国から認可された学校(いわゆる一条校)であり、正規の卒業資格を得られます。

ただしインターナショナルスクールでも「国際バカロレア」を取得すれば、国内にある一部の大学への進学は可能です。国際バカロレアについて、興味のある方は以下の記事をご覧ください。

あくまでネイティブのための学校

インターナショナルスクールは、バイリンガルを育てる学校ではなく、あくまで英語を母国語とする子どもに向けた学校です。そのため学校で、日本語の教育を受けられない点は注意しておかなければなりません。

英会話教室・英語専門の塾

英会話教室・英語専門の塾は「将来的に英語の資格試験で高スコアを取らせたい」「中途半端になってしまうのが怖い」という方にオススメです。以下でそれぞれの理由を解説します。

英語の資格試験で高スコアを取りたい

資格試験のための英語力を身に付けるなら、英会話教室で十分でしょう。高スコアを獲得するためには、必ずしもネイティブレベルの英語力が求められるわけではありません。

多くの英会話教室や英語専門の塾では、資格試験対策用のコースが設置されており、点数に直結する指導を受けられます。そのため効率的なスコアアップが期待できます。

一方でイマージョン教育では、英語の資格試験用の対策授業は用意されていないので、スコアアっプという観点だけで見れば遠回りな選択肢と言わざるをえません。

中途半端になってしまうのが怖い

英語力は身につけさせたいが、2言語が中途半端になって悪影響があるとなると不安ですよね。もし中途半端になり普通の学校に編入させようとするなら、相当な手間と労力がかかるでしょう。

一方で英会話教室・英語塾は、ほとんどが月謝制を採用しています。そのため日本語が危ないと感じたら比較的簡単に、辞めることができますし、通い直すこともできます。

ただし英会話塾や英語塾は週1~2回の通塾が一般的であるので、イマージョン教育ほど英語に触れられる時間が長いわけではありません。ネイティブレベルまでの英語力をつけるには、他の取組みも必要になってくるでしょう。

お近くの英会話教室・英語塾を知りたい方は、是非スタスタLIVEにご相談ください。お子様にぴったり合ったものをご紹介します。

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まとめ

以上イマージョン教育について解説してきました。英語力の向上はもちろん、認知力の発達にも効果のある教育法だとわかりましたね。

ただし中途半端になってしまうと、お子様の成長を阻害してしまうリスクもあります。他の教育法とも比較しながら、お子様に合った手段をご検討ください。

参考

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