✔2020年教育改革は「新学習指導要領の導入」「大学入試改革」「英語改革」の3つ
✔目的は社会や時代の変化への対応
✔知識をどう活かすかという知性が求められる
最近、「教育改革」や「大学入試改革」という言葉をよく聞きませんか?「聞いたことはあるけど、実際何が変わるの?」と思っているあなた!
そんなあなたのために、ここでは「2020年教育改革」について分かりやすく解説していきます。
目次
2020年教育改革とは?
ここではそもそもの教育改革の意味や、どのように内容が変わるのか概要を説明していきます。
そもそも教育改革って何?
文部科学省は教育について以下のように定義しています。「教育とは人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、(以下省略)心身ともに健康な国民の育成を期すること。」(参照:文部科学省教育基本法第1条)つまり社会で活躍できる人材を育成することが教育の目的の一つだと言えます。
しかし、社会というものは常に変化するものです。特に現在はAI(人工知能)やIoTなど様々な技術の発達により、目まぐるしく変化し続けています。社会が変化すると、求められる人材(社会の形成者)や必要な知識・能力も変化します。その変化に対応した力を持った人材を育成するには、教育も変える必要があります。それが教育改革です。
つまり教育改革とは社会の変化に応じて、教育の内容を変えることです。
2020年教育改革では何が変わるの?
2020年教育改革では大きく3つの改革が行われます。
- 新学習指導要領の導入
- 大学入試改革
- 英語改革
新学習指導要領
新しい学習指導要領が導入されると、学校教育の内容が変わります。その目的は以下の3つの資質・能力を身につけることにあります。
- 学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」
- 生きて働く「知識・技能」
- 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」
これまでの教育は、知識・技能を確実に習得できているかという点を評価するものでした。しかしこれからは知識・技能を習得した上で、それを社会でどのように役立てるのかを「自分で考え、表現し、判断すること」が求められます。そのために「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」を授業の中で実施します。
アクティブラーニング、新学習指導要領についての詳しい解説に関しては以下の記事をご覧ください。
大学入試改革
大学入試改革については、大学入学共通テストと個別大学試験のそれぞれが大きく変わります。
- 大学入学共通テスト
- 大学入学共通テストの実施
大学入試改革では従来のセンター試験が「大学入学共通テスト」に変わります。以下大きく2つの変更点があります。 - 「記述式問題」が導入される
(国語に関しては2020年度から導入、地歴公民・理科分野に関しては2024年度から導入予定)
→2019年12月17日に、文部科学省より導入の見送りが表明されました。 - 英語の4技能評価に民間資格・検定試験を活用する
→2019年11月1日に、文部科学省より活用の延期が表明されました。
大学入学共通テストにおいて記述式問題を導入する目的は、新学習指導要領にある「思考力・判断力・表現力」を評価することにあります。また高等学校に対して新学習指導要領を浸透させるという側面もあります。
英語4技能評価に関しては「英語改革」で詳しく説明します。評価方法に関しては高校3年生の4月〜12月の期間に受験した民間資格・検定試験(実用英語技能検定、TOEFL iBTなど)の結果が反映されます。この期間であれば2回までの受検が可能です。
※追記(2019/7/23)
数学(数学Ⅰ)の記述式問題の導入に関してはこれまで想定されていた文章での記述回答の導入は延期になりました。代わりに数式での記述回答が3問出題されます。
(参照:令和元年7月大学入試センタースライド資料より)
※追記(2019/12/18)
英語民間試験の活用の延期、記述式問題の導入の見送りが正式に決定しました。英語民間試験においては、活用の検討を1年をめどに結論を出します。2024年度には共通テスト全体を見直す予定です。これは高校で新学習指導要領が実施されるのに合わせての対応になります。主な対象は、2020年1月現在の中学1年生です。
英語民間試験の活用が延期されましたが、一部の国立大学では一般選抜において出願資格や加点対象としている大学もあります。また私立大学においても、AO推薦入試で活用する大学は多々あるので、公式HPで確認しましょう。
- 個別大学試験
また大学入試改革では個別大学試験においても、以下大きく3つの変更点があります。
- 「多面的・総合的評価」の導入
各大学の一般選別において、志望理由書・小論文・面接が必要に応じて課されます。また学校推薦型選抜、総合型選抜においても学力評価が重視されるようになります。 - 「調査書=学校活動」を重視
学校成績や課外活動(部活・委員会・ボランティア・資格・検定等)などを記載した調査書が、入学形態を問わず必要になってきます。 - アドミッションポリシーが入試内容、入試方針に反映
アドミッションポリシーとは大学が設定する「入学者受け入れ方針」のことです。それが入試内容に関係してきます。そのため志望大学のアドミッションポリシーを意識した上で、高校時代に多様な経験を積むことが必要になります。
以上のように入学形態に関係なく、学力評価や学校での活動成果の両方が求められるようになります。またアドミッションポリシーが入試内容に反映されることもあり、志望校別に異なる入試対策が必要不可欠になってきます。
英語改革
英語教育においては大きく以下の4点の変更点があります。
- 小学3・4年生で「外国語活動」が開始
年間授業時間は35時間で、英語の発音やリズムなどに慣れ親しむことや言葉としての面白さや豊かさに気づくことを目的としています。 - 小学5・6年生で「英語(教科)」が導入
年間授業時間は70時間で、活字体の大文字、小文字や文および文構造の一部を理解することを目的としています。「外国語活動」と異なり教科であるため、成績評価があります。 - 中学・高校の英語授業は「英語で行うことを基本とする」
高校ではさらに「論理・表現」の科目が新設され、スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッションなどを行います。 - 大学入学共通テストで「4技能評価」が導入
これまでのセンター試験では「読む・書く」の2つの技能を評価するものでした。しかし今後は、民間資格・検定試験を活用し「聞く・読む・話す・書く」の4技能が総合的に評価されます。
→民間資格・検定試験の活用の延期が表明されましたので、大学入学共通テストではセンター試験と同様に「読む・書く」の2技能評価になります。
このように小学生の段階から英語教育が始まり、グローバル化の進む社会においても「使える英語力」の習得が求められています。
また、以下の図を見ていただけると分かりやすいと思いますが、今回の英語改革によって小中高で学ぶ英単語数が最大で2000語も増加します。これは小学校での英語授業の導入が大きく関係しています。
小学生で英単語を学習するということは、英語の学習カリキュラム自体が前倒しになるということを顕著に表しています。このことから2020年教育改革では英語改革が重要視されていると言えるでしょう。
2020年教育改革の背景と経緯
ここでは教育改革が行われることになった社会的な背景と経緯について説明していきます。
背景
2020年教育改革には大きく2つの社会的背景が関係しています。「AIの発展」と「グローバル化」です。以下で詳しく説明します。
- 科学技術の発展
「10年〜20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボット等で代替可能に」1なると言われています。これは特徴的な例の一つですが、科学技術の発展によって世界は目まぐるしい変化を続けています。変化の激しい時代において、活躍できる資質・能力を備えた子どもを育成する必要があります。
1野村総合研究所・オックスフォード大学 マイケル A. オズボーン准教授の計算(2015)
- グローバル化
近年、グローバル化の進展により日本国内で働く外国人や海外で暮らす日本人が増加しており、世界共通語である英語に注力する必要があります。特に2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、訪日外国人の増加が予想されます。しかし日本の英語教育においてはコミュニケーション能力の育成という点において改善の余地があります。
経緯
「科学技術の発展」と「グローバル化」の背景を受けて、まずは「学校教育」と「英語教育」が見直されました。その結果「新学習指導要領」と「英語改革」という大きな変更に至り、それを評価する目的で「大学入試改革」が制定されました。
これまでの受験体制において、特に高等学校の授業内容は大学受験合格を目標にしています。そのため大学入試の内容に準拠した学習指導要領でなければ全体的に受け入れられないということもあり、同じタイミングでの実施になったという側面があります。
今までの教育と何が違うの?
ここでは今までの教育と比較した際の新しい教育について説明していきます。
今までの教育
戦後の日本においては日本復興のために集団での団結力を重視しました。そのため全員に同質の教育と機会を与える目的でいわゆる「横並びでの教育」が行われてきました。その後は「いかに多くの知識を身につけ、その上でいかに速く正確に問題を解けるか」という、「詰め込み型の教育」が重視されてきました。そしてその教育方針は現在に至るまで続いてきました。
新しい教育改革では身につけた知識を「何に、どのように生かすのか」ということまで求められています。
新しい教育
上記でも言及した通り、従来の教育では「横並びでの教育」「詰め込み型の教育」が行われていました。そのため勉強が苦手な子どもでも、努力(暗記や演習)をすればある程度の成績が見込めるものでした。
しかし新しい教育ではそうはいきません。知識を身につけた上でそれをどのように使うのかといった「思考力・判断力・表現力」が問われます。したがって、これまで通り「覚えたことをそのまま表現する」勉強法を続けていても、評価されなくなります。
このような点から、いち早く新しい教育改革の内容を理解し、適応することが求められているのです。
小中高においてどのように変わるのか?
これまで2020教育改革について説明してきました。「じゃあ、実際には何が変わるのか?」気になると思います。ここではまず教育改革全体のスケジュールについて説明します。
このように、2020年教育改革は5年間かけて行われます。この表から分かることは、現在(2019年度)の中学1年生からが新学習指導要領での教育を高校3年間受けた上で大学入学共通テストに望むということです。
小中高での具体的な変更点
小中高での具体的な変更点については「新学習指導要領はいつから?ポイントをわかりやすく解説|スタスタ」で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。
これからの社会
これまでは2020年教育改革について解説してきました。ここでは昭和45年以降の教育改革の歴史と、2020年以降に訪れるであろう社会について説明していきます。
教育改革の歴史
そもそも、これまではどういった教育改革が行われてきたのでしょうか?以下の図をご覧ください。
このように約50年の間に産業構造の変化や経済のグローバル化といった様々な変化があり、それに対応する形で4回ほど教育改革が行われてきました。
義務教育の始まりとなる学制や戦後の教育は、一体どのように実施されたのでしょうか?またゆとり教育は、どのような背景からもたらされたのでしょうか?以下の記事では、これまで実施された4回の教育改革をそれぞれ解説しています。
では今回の2020年教育改革ではどういった社会変化を見据えているのでしょうか?次項で解説していきます。
未来の社会
ここ10~20年の間を振り返ってみてください。インターネットやスマートフォンの普及、自動運転技術の開発など様々な変化が起きています。今では当たり前になっているものでも、10~20年前には全く想像できなかったこともあるでしょう。今後はさらに予測不可能な変化が起きる社会になっていくと言われています。では未来の社会はどのように変わっていくのでしょうか?いくつかの例を紹介します。
シンギュラリティ
内閣府ではシンギュラリティを次のように定義しています。「1台のコンピュータ(又は人工的な知性)の知能 が、地球上の全人類の知能の総和を超えてしまう状態・時点 (技術的特異点)」1(引用:内閣府資料)つまり、これからの社会は何が起きてもおかしくないということです。そしてこれは2045年前後で起こる可能性があると言われています。すでにアメリカではシンギュラリティ大学というものが存在していて、未来のグローバルリーダーや組織の育成を行なっています。
1内閣府経済財政諮問会議 「2030年展望と改革タスクフォース」第1回会合資料より
GoogleやNASAをはじめとするハイテク・科学界のサポートを受けて設立された新しい大学です。最新の情報技術を学んで様々な分野を横断的に学び、社会に貢献できるグローバルリーダーを育成しています。Googleのラリー・ペイジも「学生だったとしたらここへ行きたい」と絶賛するほど注目を集めている大学です。
Society5.0(ソサエティ5.0)
Society5.0とは「IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等の先端技術を活用し、経済発展と社会的課題の解決を行う」2というものです。(参照:内閣府HP)これまでの社会の変遷を以下に示しています。
Society4.0では社会の中心には「情報」というものがありました。しかし、Society5.0では最先端の技術や情報を活用することで人間がより豊かに生活できるようになります。例えば最先端技術を使い、「農作業の自動化」と「配送の効率化」を図ることで、「食料の増産」という経済発展と「食品ロスの削減」という社会的課題の解決が可能になります。2Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
このような社会が10年、20年後に訪れるかもしれません。現在の小中高生はそんな社会を生きていく、あるいは創っていく存在です。2020年教育改革は変化の激しい社会を生き抜くために必要な力・人間力の育成を目標としています。
まとめ
いかがでしたか?ここまで2020年教育改革について解説してきました。
2020年の教育改革がどういったもので、なぜ必要なのかお分かりいただけたでしょうか?今まで「2020年教育改革」という言葉を聞いたことがある人もそうでない人も、今回の記事で概要を理解していただけたと思います。
実はアメリカをはじめとする諸先進国ではすでにアクティブラーニングなどの「新しい教育」を取り入れています。現在のところ日本は先進国の中で少し後れを取っている状況です。しかし2020年には教育改革とともに東京オリンピックも実施されます。2020年をきっかけに日本は大きく変わっていくでしょう。
なにか気になることや疑問点、ご相談等があれば、スタスタLIVEにご相談ください。
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