✔アクティブラーニングとは、主体的・対話的で深い学びの視点からの学習法。
✔導入の背景は「社会的変化」の急速な発展と人工知能の普及。
✔本記事ではPBL、探究学習、ジグソー法の3種類について解説。
最近「アクティブラーニング」という言葉が注目されていますよね。
小学校や中学校でも導入されるなど、急激に浸透しつつあります。しかしカリキュラムを作成する先生方には、アクティブラーニングの導入方法や授業の進め方について不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか?
そこで今回は、スタスタがアクティブラーニングについて分かりやすく解説していきます。評価基準についても解説しますので、保護者の方もぜひ参考にしてみてください。
目次
アクティブラーニングとは?
アクティブラーニングについて調べると「能動的な学び」と紹介するサイトが出てきますが、それはアクティブラーニングのほんの一部の意味に過ぎません。ではアクティブラーニングの本当の意味とはいったい何なのでしょうか。
文部科学省によるアクティブラーニングの定義は以下の通りです。
主体的・対話的で深い学びの
視点からの学習法
これだけでは、どんな学習方法なのか具体的にイメージしにくいですよね。そこでこのキーワードの持つ本質的な意味を理解していくために、まずはアクティブラーニングが注目されている背景から解説していきたいと思います。
アクティブラーニングが注目されることになった背景
アクティブラーニングの必要性が唱えられるようになった背景は主に2つあると言われています(参考:文部科学省「新しい学習指導要領の考え方)。
- 知識・情報・技術をめぐる変化の加速に伴う情報化やグローバル化のような「社会的変化」の急速な発展
- 情報処理を得意とする人工知能の普及
今後、社会が急速に変化していくことで、この先想像もしていなかった世界が広がるかも知れません。そんなときに私たちには何が求められるでしょうか?きっと想像以上のことが起きたときに対応できる応用力や適応力です。
また人工知能の普及によって、今まで人間が請け負ってきた単純作業は人工知能に代替されます。例えば、レジ打ちや窓口業務などが挙げられるでしょう。このような簡単なコミュニケーションを必要とする仕事の他にも、計算や翻訳などの知識を必要とする仕事は人工知能の方が得意なので、代替されてしまいます。
そこで人工知能を使う側として必要な能力である問題解決能力や、人工知能に負けない人間の独特の能力である表現力を伸ばす必要が出てきました。
しかし現在の教育はどうでしょうか?知識を詰め込むことを重視しているため、人工知能に代替されてしまう人間を育成するカリキュラムであると言えます。そこで新たな教育を導入し、それぞれに必要な能力を伸ばす教育法の導入が望まれているのです。
またアクティブラーニングは、教育先進国であるフィンランドやデンマークは何年も前から導入されており、日本でも早く導入しようという声が高まっています。
文部科学省の目指す「アクティブラーニング」とは?
では続いて「アクティブラーニングとはどんな学習なのか?」について解説していきましょう。文部科学省は、アクティブラーニングには3つの柱があると言っています(参考:教育課程部会高等学校部会)。
- 主体的な学び ー 学ぶことに興味や関心をもち、自分の将来設計と関連づけながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる学び。
- 対話的な学び ー 子供同士の協同、教師や地域の方との対話や、先人の考えを手がかりにして、自らの考えを広げ深める学び。
- 深い学び ー 習得・活用・探究という学習プロセスの中で、教科ごとの見方や考え方をして思考・判断・表現を行い、学習内容の深い理解につなげる学び。
公式文書であるため少し分かりづらいですよね。簡単に言い換えると、「好奇心を伸ばし様々な人と関わることで考えを深め、問題解決能力を育む学び」というものです。
これらを総合して「主体的・対話的で深い学び」とまとめています。具体的には、グループ・ディスカッションやディベートなどの学習方法を導入することで、生徒は問題を発見し協同して解決する体験ができます。その中で自分の意見を表現し、他者の意見を受け入れるトレーニングをすることができます。したがって社会的能力や経験、教養を身につけることができるとされています。
つまり一人で能動的に学習していく「自立学習」とは異なり、複数人で協同して学習することがアクティブラーニングを語る上で重要な要素なのです。
どんな力が伸びるのか?
ここまで文部科学省を中心に、アクティブラーニングの導入が進められていることが分かったと想います。では、アクティブラーニングの導入によって、どんな力が伸びるのでしょうか?以下の内容がアクティブラーニングによって伸びるとされる主要な能力です。
- 自ら進んで学ぶ能力 ― アクティブラーニングでは、生徒が中心となって授業を進めるので、自然と主体性が身につきます。また生徒同士で話し合って意思決定をする場面も多いことから、自分で調べて学ぶ能力が身につくとも言えます。
- 周りの皆と協力し合う力 ― グループディスカッションや共同作業、体験学習の多さから、他の生徒と積極的に関わる場面は少なくありません。このような環境下では、従来の授業では身につかなかった協調性が生まれると言えます。
- 新しい課題に気づき解決する力 ― 他の生徒と話し合う時間が多いため、今までになかった価値観や考えを知る場面が多いと言えます。したがって多くの視点から物事を捉えられるようになるため、問題を発見しやすくなり、問題に対しても多くの切り口から考えられるので問題解決能力を鍛えることができます。
詳しくメリットや効果について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
アクティブラーニングの種類
では具体的にアクティブラーニングはどういった方法で学ぶことができるのでしょうか?
アクティブラーニングにはジクソー法やKP法など多くの種類がありますが、今回は3種類紹介していきます。
PBL(Project Based Learning)
PBLとは「問題解決型学習(Project Based Learning)」の訳です。これは自ら問題を発見し、解決する能力を養うことを目的とした教育法です。
以前は医学や歯学、看護学のような、現場での問題解決能力が重要視される教育課程で採用されていましたが、アクティブラーニングの教育方法として注目され始めました。
- テーマを決める。
- 解決策を考える。
- 相互に話し合い、何を調べるか明確にする。
- 自主的に学習する。
- 新たに獲得した知識を問題に適用する。
- 学習したことを要約する。
基本的にはこの流れで進行していきます。しかしPBLには2つの方法があります。1つは「チュートリアル型」です。これは一つの課題に対して仮説を立て、検証していく方法です。そしてもう一つが「実践体験型」です。チュートリアル型に対して、こちらは課題を実社会の中に設定し、民間の企業と協力しながら問題を検証していきます。教育現場ではチュートリアル型の方が取り込みやすいため、PBLの主流として行われています。
この学習法を取り入れることで、生徒は問題解決を通して知識を応用する力を身につけることができます。またディスカッションをメインにした授業によって、表現力も備えることができるのです。
探究学習
次に「探究学習」について解説していきます。探究学習とは、生徒が自分で問いや課題を見つけて情報収集や情報の整理・分析、まとめを主体的におこない、独自の最適な答えを見つけ出す学習方法を指します。
情報の収集は文献からだけでなく、フィールドワークによっても収集します。したがって自然体験や就業体験、ボランティアなどの社会と関わる活動までできるのです。
このように誰かと協同して課題を解決することで、多様な考え方を持つ他者と適切に関わったり、新しい価値を創造したりすることで、地域社会への参画や貢献の態度に繋がるとされています。
また探究学習に取り組んでいる学生ほど、国語や数学などの思考力を必要とする科目の学力が伸びるというデータもあります(参考:文部科学省「総合的な学習の成果と課題について」)。この結果より、自ら考えて最適な解を探す活動によって思考力や表現力を伸ばすだけでなく、考え方のプロセスを学ぶこともできるので、学力も伸びるのです。
ジグソー法
最後は「ジグソー法」についてです。ジグソー法は3ステップに分かれており、2ステップまでを準備段階とし3ステップ目でジグソー活動に入ります。
- ホームグループ ー ホームグループとは学習者が所属するグループです。学習者を均等に振り分けグループを作り、課題を発表します。
- エキスパート活動ー この活動ではグループ内のメンバーごとに違う学習をしてもらいます。その後、同じ内容を学んでいる他のグループの構成員同士でエキスパートグループを組み、学びを深めます。
- ジグソー活動 ー エキスパートグループで学習内容を理解し、最初のホームグループへ戻します。そこで最初に与えられた課題に取り組みます。課題を解決する中で、エキスパートグループで学んだ内容が必要になるので、協力・合意形成・プレゼンテーションが必然的に必要になります。
これがジグソー法の大まかな流れになります。この学習法では学習者全員が大きな責任を負い、仲間に学習してきた内容を伝えることが課題解決に必要になります。そのためグループでの課題解決力はもちろんのこと、個人の表現力や理解力を鍛えることができるのです。
より詳しい種類については、以下の記事でご覧ください。
導入による科目別の変更点
ここまでアクティブラーニングについて説明してきました。では今後、教育現場ではどのように取り込まれるのでしょうか?
アクティブラーニングは教育方法によって伸びる能力が異なります。したがって科目によって導入する形態に違いがあるとされています。では以下の表で、それぞれ確認していきましょう。
科目 | 導入例 | 結果 |
国語・英語 | グループ・ディスカッション、 ディベートなど |
国語や英語などの言語科目におけるアクティブラーニングの重要性は想像しやすいかと思います。グループディスカッションやディベートなどの教育法を導入することで作品の理解を深めたり、自分の考えを表現したりすることが可能になります。 |
数学 | グループ・ワークなど | 問題の解き方を他の人に教えることで、自分の理解が深まるということは経験がある人も多いのではないでしょうか?数学では一見アクティブラーニングの効果がなさそうですが、理解を深め新たな解法を身につけるという点で非常に効果があります。 |
理科 | フィールドワーク、 実験など |
理科では実際の実験やフィールドワークを通して、生徒の好奇心を育む効果があると言われています。学習の中で発見した問題を実験で検証し、それを発表やレポートで共有することで学びを深めることができます。 |
社会 | フィールドワーク、 グループ・ディスカッションなど |
社会は暗記科目と言われますが、アクティブラーニングを取り入れることで学びが深まるとされています。フィールドワークによって遺跡や古代の生活に触れたり、グループワークで当時の人々の感情を想像したりするなど学びが広がるとされています。 |
このように教科ごとに合った学習法を取り入れることで、効果的に学べると共に生徒の好奇心を育む効果もあるのです。
実際に小学校、中学校および高校でどのようにアクティブラーニングが導入されているのかは以下の記事で紹介しています。
カリキュラムを作る際の注意点
ここまでアクティブラーニングの種類や、教科別の変更点について紹介しました。しかし、アクティブラーニングを導入しても、学習範囲や授業時間は変わらないので、授業時間が足りなくなることを不安に思う方は多いのではないでしょうか?ここからは、授業時間の効率的な活用方法について紹介します。
- 板書の時間を取らない:パワーポイントなどで授業を行い、そのプリントを配布することで板書の時間を減らす方法です。自習に近い板書の時間を減らすことで、アクティブラーニングに注力できる時間を捻出することができます。
- 説明を簡単にする:教科書に分かりやすく書いている内容の説明は省き、分かりにくい部分だけ説明することで効率の良い授業を行う事ができます。
- 個人ワークは宿題にする:資料の読み込みや、自分の考えをまとめる部分を宿題にすることで、授業時間を有効活用する方法です。授業時間は限られているので、その他に時間を作り出すという考え方です。
- グループでの役割をあらかじめ決める:先に役割を決めてから活動をさせることで、役割決めの時間を短縮させる方法です。生徒に決めさせると役割が固定してしまうというリスクも回避できるので、一石二鳥だと言えます。
これらのことを意識しながらカリキュラムを作成すると、アクティブラーニングを導入しても今まで通りの学習範囲を教えることができるでしょう。
評価方法について
アクティブラーニングの批判意見に、テストのような明確な評価基準がないから成績が公平に付けられないという主張があります。しかし、アクティブラーニングの評価に使えるルーブリックという評価基準があるので紹介していきます。
ルーブリックは、パフォーマンス課題に対して明確かつ公平な評価を実現する目的をもつ評価指標です。評価観点と学習者の達成度をマトリクス化したもので、生徒にも提示されます。したがって学習者も学習の目的を意識しながら活動できるので、学習効果が高まるとされています。
詳しい説明は以下の記事でされているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
ここまでアクティブラーニングについて意味から指導方法まで解説してきました。アクティブラーニングによって、今後の社会を生き抜くために必要な能力を伸ばせるということは分かっていただけたと思います。
アクティブラーニングを実際に授業で行う際の参考になれば幸いです。
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