【まとめ】アクティブラーニングの授業例を紹介|中学校・高校・大学

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スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
キーポイント

✔中学校:京都市で景観が保護されている理由の考察・グループ内共有。

✔高校:発酵の仕組みについて考察・ブレインストーミング・共有。

✔大学:情報セキュリティにまつわるプレゼンテーションとディスカッション。

アクティブラーニングが近年では話題を呼んでいます。さまざまな課題に対して議論を深めて、問題解決力を養える学習方式です。

しかし様々な種類があることから、実際にどのような学習方法なのか、いまいちよくわからない人もいるのではないでしょうか。

より深く知るには実際に行われている授業例が参考になります。今回は、中学、高校、大学などで行われているアクティブラーニングの授業例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

アクティブラーニングとは

アクティブラーニングは、積極的・能動的な姿勢によって課題を解決していく学習方式です。具体的な活動として、討論する、体験する、他者へ教えるなどの学習行為が代表的です。高校生、大学生、社会人、企業幹部など年齢や世代を問わずに学習方法の一つとして取り入れられています。

知識を獲得することではなく、議論を通して個人としての結論を出すことが目的です。そのため、議論に正解がありません。したがって、指導者の力量によって学習効果が変動するのも特徴的です。

また、アクティブラーニングは、一般的な座学の授業や、読書などによるインプット学習と比べて、学習定着率が高いことも知られています。今後ますます導入される事例が増えていくことでしょう。

アクティブラーニングの概要について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

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アクティブラーニングが注目される背景

では、なぜアクティブラーニングが注目されるようになったのでしょうか?その大きな理由の一つが情報化社会の到来です。知識、情報、技術的な変化が進み、社会構造が複雑化してきています。

それに伴い、正解が予測できない課題も増加傾向にあり、従来以上に問題解決力が要求される時代となりました。したがって、さまざまな課題に対して正解のない議論を経験できるアクティブラーニングが、時代に沿った学習方法として注目を浴びるようになったと言えるでしょう。

また、情報化社会が進むにつれ頭角を現し始めたAT(人工知能)の登場も関係しているとされています。おそらく、単に知識を伝授するだけの仕事であれば、AI以上適した存在はないでしょう。近い将来に単調な授業を行う教員の仕事は奪われてしまうことが考えられます。

その点で、AIには実現できない学習方法として、人間だからこそ行えるアクティブラーニングが注目されるようになったという見方もできます。

アクティブラーニングの授業例:中学校

アクティブラーニングは、中学校、高等学校、大学などで実践されている内容が異なります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか?まずは中学校の事例から紹介していきます。

由利本荘市立西目中学校

地域や地方を調査して特色を発見し、課題解決を行う授業です。具体的には、京都市で景観が保護されている理由について、その必要性や課題を考えさせる内容になっています。

具体的には、まず、生徒一人ひとりが京都市で景観が保護されている理由について発言し、全体で共有しています。

その後、資料を活用してクラスメートと意見を交換して、考え方を深めていくのです。そして、意見交換後に机を円形に変えて全体で再度意見を共有します。その際に、教師が質問をはさんだり、意味づけをしているのも特徴的です。

最後に、学んだ内容について記述をすることで振り返る作業を取り入れています。

参照:独立行政法人教職員支援機構『アクティブラーニング授業実践例』

授業についての考察・分析

この授業で特徴的なのは知識をインプットする作業が見られないところです。全体での意見共有、グループでの意見交換、教師とのやり取り、学習の記録など、いずれも全てアウトプットの作業が中心です。

アクティブラーニングは、その名の通り能動的な学習方式になっています。由利本荘市立西目中学校の授業事例は、まさに、アウトプット=能動的であることを感じさせる内容でした。

またアクティブラーニングには議論が活発化せずに、形式だけになってしまう危険があります。しかし、この授業では、教師がうまく生徒の間に入り、議論の火付け役となっています。

アクティブラーニングは教員の進行管理次第で学習効果が左右するとわかる事例であるとともに、アクティブラーニングのデメリットをうまく克服している事と言えるでしょう。

アクティブラーニングの授業例:高校

高校時代は、それぞれが卒業後の進路について悩む時期です。受験などが意識されるなか、どのようなアクティブラーニングが行われているのでしょうか。高校生が実際に取り組んだアクティブラーニングの授業例を紹介します。

福岡県立北筑高等学校

発酵と人間生活の関わりを探求して、発酵の仕組みについて考察したことを表現する授業です。まずはじめに、発酵と人間生活の関わりや発酵の仕組みについてブレインストーミングを行っています。

その後、提起されたそれぞれの疑問点や質問事項について、議論に値すべきものを生徒同士で意見交換しながら精査するという流れです。

精査された質問事項はホワイトボードでまとめられていきます。その際に、教員があえて発問をしたり課題を提示したりしていないところが特徴的です。

ホワイトボードにまとめられた質問事項をクラス全体で共有し、何を調べる必要があるのかを浮き彫りにしていきます。ちなみに、この授業では「微生物が健康にどのような影響を与えるか」という質問などが注目されました。

続いて、定まった課題に対して各々が教科書や辞書で調査していき、その結果を再度ホワイトボードで共有しています。

「人間に有益なものが発酵、害があるものが腐敗」などの結論が見られ、その違いをさらに知る必要があるということが新たな課題として浮き彫りになりました。

参照:独立行政法人教職員支援機構『アクティブラーニング授業実践例』

授業についての考察・分析

この授業のポイントは各自で課題を発見する力が身に着けられるように配慮されているところです。

意見交換というと提示された課題に対して行われる印象がありますが、この授業ではそもそも議論すべき内容についてクラス全体で取捨選択する過程を踏んでいます。

教師が課題の提示や発問を行っていないことも、生徒達自ら課題設定できるように配慮してのことでしょう。

高校生の中には、卒業後に就職する生徒もいます。その時には、社会人として自ら課題を発見して解決する能力が問われるのは言うまでもありません。

その前段階として、福岡県立北筑高等学校のアクティブラーニングは、課題を見出す力を養う授業としてふさわしかったと言えます。

センター試験が廃止され2020年度から導入される大学入試共通テスト。そこで新しく求めらる問題解決力の養成にアクティブラーニングが効果を示した事例と言えます。

アクティブラーニングの授業例:大学

最後に紹介するのは大学で実施されたアクティブラーニングの事例です。中学や高校と異なり、国数英理社の五科目以外でも授業が行われているのが特徴的です。そのほかに、中学や高校の授業と比較してどのような違いがあるのかにも着目して解説します。

長崎大学

情報セキュリティにまつわる社会問題を分析して総合的な理解を深める授業です。全15回の授業が座学(10回)とグループワーク(5回)に分けて行われました。座学の授業では、講義後に授業で学んだことをワークシートにそれぞれが記載し、教員がグループにインタビューする形式をとっています。

グループ学習では課題を設定して、グループ単位で結論をワークシートにまとめる方式を採用しました。課題は、架空の学科事務室におけるセキュリティー対策の考案が設定されました。最終回では、完成したワークシートをもとにプレゼンテーションとディスカッションを行っています。

最終的な成果物は大学のシステムにアップして受講者全員が確認できるように工夫されました。

参照:長崎大学『アクティブラーニング事例集1 Ⅱ事例編 3.情報社会の安全と安心』

授業についての考察・分析

このアクティブラーニングで特徴的なのは、座学の授業も含まれているところです。インプットした後にインタビューでアウトプットさせる授業方式を取っているため、記憶の定着率の面でも効果的だと考えられます。

アクティブラーニングというと、話し合いがメインであるイメージをしてしまいがちです。その反面、知識を吸収する時間も柔軟に取り入れることが可能であるとこの事例からわかります。

また座学の授業とは別にグループワークをメインとした時間を取り入れることで、受講者がじっくりと調査して、学習したことを焦らず表現できるようになっています。

総じて、長崎大学の事例はインプットとアウトプットのバランスが良く、問題解決力や表現力を養うだけでなく知識の定着率を高めるのにも適した内容だったと言えるでしょう。

授業のテーマが、実際のセキュリティー対策を考えるように設定されているところも着目ポイントです。中学・高校の科目は範囲が限定されているため、実社会と関係あるテーマを設定しづらいと言えます。

しかし、大学の講義はあらゆる範囲の科目が対象です。その点で、アクティブラーニングに実社会で起こり得る課題を設定しやすいのです。

そのほか受講者の興味や関心を引き出せるように、完成物をシステムで共有できるようにしているところも見過ごせないポイントです。

ただこの点に関しては、中学や高校と比べて施設が大規模な大学だからこそ実現できることへの留意が必要です。

いずれにせよ、アクティブラーニングは設備環境によっても学習効果を高められることを期待させてくれる事例とも言えるでしょう。

まとめ

以上、アクティブラーニングの実践事例を中学、高校、大学別に紹介しました。受講者の成長段階や学習環境で内容が異なることを知ることで、アクティブラーニングの全容を体系的に把握していただけたのではないでしょうか。

アクティブラーニングでは、中学や高校で行われがちな座学の授業では学べない課題解決力や情報整理力、結果を表現する力などを養えます。特に、実社会に関わるテーマに取り組むことで勉強する意味を体感できる点が最大のメリットです。

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