アクティブラーニングにもデメリットはあった!?失敗事例から見る課題と今後の対応

107-demerit-activelearning-1
ABOUT US
スタスタ編集部
当社のインターン生である、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、青山学院大学、明治大学、立教大学、東京理科大学、東京学芸大学、筑波大学・・・の現役大学生たちが、自身の小中高大受験・通塾・塾講師経験をベースに、各塾の教育方針や学習システム等の特徴を独自に分析し、編集・執筆しています。
キーポイント

✔デメリットは「授業の進行に時間がかかる」「確実な評価を下せない」「受験に適していない」「グループ内でいさかいが起こる」「適切な話し合いが行われない」「単なる自主学習に陥ってしまう」の6つ。

✔失敗事例は「受講者が怠慢で非常識な態度で地域に迷惑をかける」「リーダーの不在でグループワークが成り立たない」「授業がマンネリ化して学習意欲が低下」の3つ。

✔今後の対策は、起こり得る失敗を想定し、解決策を準備してから導入すること。

通常とは異なる学習方法のアクティブラーニングが注目されるようになりました。一見、効果的に見えるようなものでも、実は、デメリットが存在するのをご存知ですか?今回はアクティブラーニングのメリットだけでなく、デメリットについてもわかりやすく解説していきます。

なお、アクティブラーニングとは何かを詳しく知りたいかたは、意味や定義をこちらの記事で解説しているのでチェックするとよいでしょう。

055-activelearning

アクティブラーニングの目的とメリット

アクティブラーニングの目的は、受講者に能動的な学習を促すことです。

従来の授業では、教師の発言や黒板に書かれたことをノートに取るという受動的な学習形式が一般的でした。知識を定期的にインプットできますが、学んだことをどのように活かして社会に関わっていけばよいのかという方法までは体得しづらいという課題があります。

これでは、より良い人生を送るのに、勉強が役立たないといっても過言ではありません。

文部科学省によると、アクティブラーニングとは、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」と定義されています。この定義の通りに、現在提唱されているアクティブラーニングには、実社会・実生活に則した学習方法が多く見られます。

例えば、研究対象となる地域に赴いて生活や社会の仕組みを調査するフィールドワークや、設定した課題を解決するために話し合いや自主的な学習を行うPBLなどが代表的です。

必要に迫られた情報収集の方法や、収集した情報を使った課題解決方法などを学ぶ過程は、その後の人生で遭遇する問題解決の過程と類似しており、社会生活を送るうえで役立つと言えるでしょう。

アクティブラーニングのメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

103-merit-activelearning

アクティブラーニングのデメリット

ここまでアクティブラーニングを学ぶ意義についてお伝えしました。社会で必要とされる能動的な課題解決力を養うのに、今後欠かせない学習スタイルとして確立していくだろうと感じていただけたと思います。

しかし、アクティブラーニングも万能ではありません。デメリットがあることも見過ごせない事実です。アクティブラーニングをやみくもに取り入れて、かえってお子さんの学習効果を下げないように、最低限知っておくべきデメリットをご説明していきます。

授業の進行に時間がかかる

通常の授業では正解を教えるだけで済みますが、アクティブラーニングでは答えにたどり着くまでの過程を経験させなければなりません。

その点で、話し合いや考察の時間が必要となり、どうしても授業の進行に時間が多くかかるという課題が目立ちます。そのため、そもそもアクティブラーニングを取り入れること自体が難しいという教育現場も多いと言えるでしょう。

また、仮に取り入れた際にも問題点が見られます。例えば、テーマが簡単である、あるいは、受講者の学習能力が高いとき、課題の解決方法がすぐにわかってしまうという問題点です。これらのケースでは、参加者が単に時間を浪費する事態になりかねません。

確実な評価を下せない

アクティブラーニングは評価が難しい学習方法としても知られています。知識を確認する授業では、覚えているかどうかをペーパーテストの得点で評価できます。しかし、学習過程は数値化することが難しく、結果として何を軸に評価するればよいのかが定まらないのが実情です。

受験では入試試験と共に学校の成績が参考にされるケースもあります。その点、アクティブラーニングは確実な評価を下せない以上、教育現場で取り入れるのが難しいのはいうまでもありません。

受験に適していない

入試試験の方法として、ペーパーテストが一般的です。そのため、知識を獲得するインプット型の学習が不可欠になります。しかし、アクティブラーニングは知識を活用する方法を学ぶ学習であるため、ペーパーテストで得点を上げるには非効率です。

アクティブラーニングが実社会で役立ついえども、受験に失敗してしまっては本末転倒と言えます。高校受験、大学受験という節目がある以上、生徒と保護者にとってアクティブラーニングに注力することは難しいでしょう。

ただし近年では、実社会で役立つ能力が必要とされて来ているのも事実です。センター試験に変わる大学入試共通テストでは、知識のインプットに加えて、表現力・判断力・思考力が問われます。そのため将来的にはアクティブラーニングで身に付く能力が、受験で活かされる可能性は十分あると言えます。

グループ内でいさかいが起こる

一般的な授業では、教師が生徒に向かって発言する形式が取られるため、コミュニケーションが乏しいという特徴があります。一方、アクティブラーニングは複数人でのコミュニケーションが不可欠です。

しかし、会話がもたらすのは学習効果だけではないことに目を向ける必要があります。意見をぶつけ合うことでお互いが嫌な思いをして、時には関係性が悪化してしまうケースもあるからです。そのほか、同様の観点から、相性が悪い生徒が一緒のグループになってしまうと、そもそも話し合いが行われないという問題も生じます。

よって、教師がアクティブラーニングを導入する場合は、受講者同士の人間関係まで配慮しなければなりません。当然、それに伴う高度な判断が要求され、事前準備の負担が増えると言えるでしょう。

適切な話し合いが行われない

アクティブラーニングの話し合いは客観的な考え方を得られるというメリットがありますが、生徒の意識が低いとおしゃべりの時間になってしまう可能性も危惧されます。真面目に参加しようとしている生徒が不真面目な生徒に邪魔されてしまうケースがあるためさらに厄介です。

意識の高い生徒が集まる塾であれば問題はないと言えますが、さまざまな価値観が混在する教育現場では、上記のデメリットが顕著になってくることでしょう。

また、他者と話すことが苦手な生徒が集まってしまうと議論が活発化しないという問題点もあります。したがって、話し合いの時間を有意義にする工夫が不可欠です。

単なる自主学習に陥ってしまう

アクティブラーニングは受講者の能動的な学習を基本としています。しかし、能動的な学習には自主学習も含まれるところに、実は問題点が潜んでいるのです。

例えば、教師がコンピューター室に生徒を集め、それぞれがインターネットで調査するような授業について考えてみましょう。アクティブラーニングの形式に沿っていますが、受講者は調査をしているふりをできるばかりか、関係のないHPを閲覧することも可能です。

このように、アクティブラーニングは形式だけにこだわると、単なる自主学習となりかねません。したがって、特別な制限を設けない限り、形骸的な授業となってしまう可能性が危惧されます。

アクティブラーニングの失敗事例

ここからは名古屋商科大学の制作した、「アクティブラーニング失敗事例ハンドブック」を参考に、アクティブラーニングについての失敗事例をいくつかご紹介します。

事例1:受講者が怠慢で非常識な態度で地域に迷惑をかける

課外活動で怠慢な態度を示す学生が出てしまった事例があります。具体的には、地域のコミュニティーセンターでロビーのソファに寝そべる、飲食をする、おしゃべりをする、携帯を使用するなど、不適切な行動をする学生の姿が見受けられたとのことです。

また、学生の非常識な態度により、コミュニティーセンターがゴミで散らかったり、施設に住民が入りにくくなったりという問題点なども生じました。このような言動は、関係先や周りの生徒に不快な思いをさせてしまいますし、該当生徒自身にとっても無駄な時間となってしまいます。

1人の生徒が怠慢な態度をとることで、他の生徒のやる気も緩んでしまいます。このような問題点・失敗事例は、多くの学校で抱えるもので、以下のような対策がとられています。

  • アクティブラーニングを導入している意義を理解してもらう
  • 学内表彰
  • 生徒同士でチームワークを育む仕掛け
  • 地域住民など関係者からのアンケート結果の開示 など

このような対策を実施することで、課外活動への生徒の意欲を高め、より良いものへと変えていくのです。

事例2:授業がマンネリ化して学習意欲が低下

同じパターンで続く授業にグループのメンバーが学習意欲を低下させてしまうケースです。面倒な課題を早く終わらせたいという態度を示すメンバーや、議論の過程を踏まずに結論を決めたがるメンバーなどが出てきたとのことです。

この事例からは、初めは目新しく感じるアクティブラーニングも同じ流れを繰り返すと刺激が薄れてくる傾向が見て取れます。グループワークがマンネリ化してしまう主な原因は以下のとおりです。

  • 授業の進め方が毎回同じ
  • 1度やってみて反応が良かったものを繰り返す
  • 生徒への対応が十分でない

そして、マンネリ化を防ぐための対策や大事なことは以下のとおりです。

  • 質問や小テスト、事例紹介などを交えパターンを変える
  • 1つの課題で長時間作業せず、短時間の複数タスクに分けて取り組む
  • 生徒の能力を考慮したうえで課題を選ぶ

マンネリ化を防ぐことができれば、より効果的に・能動的に学習に臨むことができ、さまざまな発見をすることができます。

事例3:グループワークで姿勢や態度に差がある

アクティブラーニングでは、能動的な教育スタイルを重視していることもあり、プレゼンテーションやディスカッション、グループワークなど、全員参加型の授業や意見を述べる時間が多く用意されています。

しかし、グループワークをしても生徒によって取り組む姿勢や態度に差が出てしまうこともあります。

例えばグループワークに関わろうとしない怠慢な態度、他人任せで自ら動こうとしない姿勢などです。このような事例が発生する主な原因としては、以下が挙げられます。

  • グループワークを行う意義が伝わっていない
  • 協調性が育まれていない
  • グループのリーダー、もしくは教師のリーダーシップが不足

そのため、このような問題点・失敗事例を起こさないためには以下のような対策が考えられます。

  • グループの細分化
  • リーダーに責任感を持たせる
  • グループワークの意義・目的を理解させる

グループワークの質を高いものにすることで、コミュニケーション力や協調性、リーダーシップなどが形成され、適度な自己主張ができるようになります。

今後アクティブラーニングを適切に取り入れるには?

ここまでアクティブラーニングのデメリットや失敗事例を紹介してきましたが、メインの学習として取り入れるには課題が山積していることがお分かりいただけたことでしょう。

しかし、アクティブラーニングによる能動的な学習方法は文部科学省が着目している点も踏まえて、学習者に有益であることは間違いありません。したがって、デメリットや失敗事例を踏まえたうえで適切な実践を行うことが大切と言えます

今回紹介したデメリットや失敗事例に共通しているのは、アクティブラーニングは漫然と行うと問題が起こることです。

例えば、話し合いが活発化しない状況が危惧されるのであれば、指導教員が適宜話し合いに加わるという方法もあります。一方、指導者の管理が行き届きにくいグループワークでは、生徒が怠けられないように積極的に参加しないと完成できない成果物を提出させるなどの方法も一つの手です。

このように、指導教員が対策を打つことで解決できるケースは実に多いと言えます。よって、指導者がアクティブラーニングの種類に応じて起こり得る失敗を想定し、その解決策を準備してから導入することが今後の対策として有効でしょう。

まとめ

アクティブラーニングのデメリットや失敗事例を踏まえ、適切に取り入れる方法についてご説明しました。本記事がアクティブラーニングのデメリットについて知りたいという人や、今後どのように取り入れればよいのか悩む人のお役に立てたのであれば幸いです。

アクティブラーニングは指導者次第で良くも悪くも学習効果が変わってしまう学習方法です。そのため、アクティブラーニングに習熟した指導者がいる環境で学習することが好ましくなります

塾コンシェルジュは適切なアクティブラーニングを行える塾に精通しています。デメリットや失敗事例を踏まえて、アクティブラーニングで学習したいという生徒さんや、お子さんに学ばせたいという親御さんは、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか?

スタスタの「アクティブラーニング」記事集

小学生必見

オンライン塾徹底比較

中学生必見

オンライン塾徹底比較

高校生必見

オンライン塾徹底比較